認知症で徘徊中 列車事故 妻に介護責任 賠償命令 名古屋高裁判決

2014/04/26

朝日新聞 2014年4月25日

徘徊中に列車にはねられ死亡した愛知県の男性(当時91)の遺族に、JR東海が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、名古屋高裁であった。介護に携わった妻と長男に請求通り約720万円の支払いを命じた一審の判決を変更し、妻の責任を認め、約359万円に減額して支払いを命じた。長男には見守る義務はなかったとして、JR東海の請求を棄却した。

高齢化に伴い、認知症の人の在宅介護を国が進めようとしている中、介護現場からは「時代に逆行した判決だ」と批判の声が上がっている。

JR東海は、列車の遅れなどに伴う振り替え輸送費や人件費などとして損害賠償を求めていた。昨年3月の地裁判決に対し、高裁判決は以前から別に暮らしている長男には扶養義務があったに過ぎず、介護の責任を負う立場になかったとして、男性への請求を退けた。妻については民法上、配偶者として男性を介護・監督する義務があったと判断。高齢だったものの、男性を介護する義務を果たせないとは認められないと判断した。その上で、徘徊防止のためのセンサーを切っていたとして、「監督義務者として十分ではなかった点がある」とし、事故に対する責任があると結論づけた。

ただ、裁判長は、妻の日常の見守りについて、「充実した介護体制を築き、義務を尽くそうと努力していた」と評価。JR東海の安全管理体制については、「安全性に欠ける点があったとは認められない」としたうえで、「社会的弱者も安全に鉄道を利用できるようにするのが責務だ」と言及。フェンスに施錠したり、駅員が乗客を注意深く監視したりしていれば事故を防ぐことができたとして、「賠償金額は一審の5割が相当」とした。