認知症:115人鉄道事故死 遺族に賠償請求も

2014/01/13

毎日新聞 201401120300

認知症の人による鉄道事故を巡っては、名古屋地裁判決が昨年8月、「家族が見守りを怠った」というJR東海の主張を認めて約720万円の賠償を遺族に命じた(遺族側が控訴)。これに対する反響は大きかった。

鉄道事故については各社が国土交通省に届け出て、同省は「運転事故等整理表」を作成している。毎日新聞は情報公開請求で得た整理表と各事故の警察発表などから、「認知症 」という言葉が介護保険法改正で取り入れられた05年度以降の事例を調べた。

認知症またはその疑いのある人が列車にはねられるなどした鉄道事故が、2012年度までの8年間で少なくとも149件あり、115人が死亡していたことが分かった。事故後、複数の鉄道会社がダイヤの乱れなどで生じた損害を遺族に賠償請求していたことも判明した。

毎日新聞はJR東海の事故を含め、被害者の氏名や所在地が判明した9社10件の事故について、遺族や関係者に話を聞いた。9社はJRが東海、九州、東日本、西日本、北海道だった。私鉄では名鉄、南海、東武(2件)、近畿だった。影響人員と請求額はJR東海が27400720万円、JR九州が1200人請求なし、JR東日本が1900人請求なし、JR西日本が17000人請求なし、JR北海道が10500人請求なし、だった。私鉄では名鉄が500080万円、南海が93000人請求なし、東武が390016万円と、21000137万円、近畿が1500080万円だった。影響人員と請求額を考え合わせると、JR東海の720万円の請求額は突出している。またJRの他社は請求しておらず、私鉄が請求する傾向にある。しかし南海は最も多くの影響人にもかかわらず、請求しておらず、各社で対応が異なる。

なおこの記事の続報によると、東武の137万円請求は、和解により支払額は半額程度になったようだ。ますます名古屋地裁の判決額720万円が異様に大きく映る。