議会の音声文字化システム公開 筆談区議をサポート

2015/06/26

朝日新聞 2015年5月27日

 「筆談ホステス」として知られる聴覚障害者の斉藤里恵さん(31)が4月に初当選した東京都北区議会で、議場の音声を自動で文字化する新たなシステムが導入された。25日に報道陣に公開されたテストでは、ほぼ正確に発言が文字化されたが、別の文字が表示されるケースもあった。26日の議会本会議から実際の運用が始まる。

 富士通などが開発した新システムは、区長や区職員らの議場での発言を演壇や議員席に設置したマイクで集音、議長席近くに置いたパソコンのソフトで文字化し、斉藤さんや聴覚に障害がある傍聴者らに貸し出したIT端末に表示される仕組み。区議会は400万円をかけて、議場用と委員会室用に2セット導入した。

 区議会事務局の田名辺要策次長は「文字化の精度は90%以上だと思う。大意は分かってもらえる」。区議会事務局は文字化の精度を上げるため、議会の専門用語や区内の地名など約300語をシステムに登録した。今後さらに増やしていく方針だ。

 斉藤さんは、1歳で髄膜炎になって耳が完全に聞こえなくなり、聴覚障害で最重度の2級に認定されている。口の動きから相手の言葉を推測する読唇術を使えるものの、広い議場では難しい。また、「手話は学校で習わなかったので苦手」。議場での手話通訳による対応は難しく、斉藤さんから意見を伝えることにも課題がある。

 そこで区議会は、区議が議場に私有パソコンを持ち込むことを新たに認めた。斉藤さんは、キーボードで打ち込んだ文章を機械音声で読み上げるソフトが入った私有パソコンを議場で使えることになった。

 この日は区議にも新システムが公開され、斉藤さんも文字化の精度などを確認した。議場への持ち込みが認められたパソコンを使って記者会見した斉藤さんは、「一部読めない部分がありましたが、文章全体は分かりました」。議会用語の登録数を増やすなどして精度を上げてほしいと期待した。