「筆談ホステス」斉藤さん 区議に  「音あること前提」公選法の壁に挑む

2015/05/18

朝日新聞 2015年4月27日

 「筆談ホステス」として話題になった斉藤里恵さん(31)=日本を元気にする会=が、26日投開票の東京都北区議選(定数40)で、初当選した。1歳で聴覚を失い、うまく話せない。選挙運動を細かく規定する公職選挙法が立ちはだかる中、候補者50人中トップの6630票を集めた。

 青森県出身で2007年に上京。銀座のクラブでホステスとして働き、筆談での接客が人気を集めて自叙伝も出版された。知人の前区議から誘われ、「障害者の声を政治の世界に届けたい」と立候補した。

 斉藤さんは27日未明、選挙事務所で筆記ボードに「まだ信じられない」「バリアフリー社会の実現に力を注ぐ」と書いた。

 公選法上、区議選では選挙ビラを配れない。斉藤さんは街頭演説の代わりにボードに文章を書いて見せようと考えたが、公選法が禁じる「文書図面の掲示」にあたる可能性があると断念。告示後は有権者一人ひとりに名刺を渡し得PRしたが、これも違反の恐れがあると警察から指摘され、支援者とともに声をかけるしかできなかった。

 「今の選挙制度は、『音』があることが前提。言語や聴覚の障害者を排除しているのでは」と訴える。手話は勉強中で、区議会ではパソコンの読み上げソフトを使って質問するなどの方法を考えており、議会側と相談していくという。