
認知症後見 自治体に差
朝日新聞 201年4月5日
身寄りなし・虐待の高齢者救済
認知症の人の財産管理などを委ねる成年後見を、市区町村長が申し立てるケースが増えている。しかし、取り組みには自治体にょって温度差があるうえ、申し立てに至るのは「氷山の一角」との指摘もある。
2013年春、都区内のある病院に、80代の一人暮らしの女性が入院した。やがて寝たきりになり、治療代を払えなくなったため、女性が住んでいた区は成年後見の申し立てをしてもらおうと、離れてすむ4人の子に連絡を取った。しかし4人とも「全く付き合いがない」と拒んだ。そこで区長がやむなく家庭裁判所に成年後見を申し立てた。
親族による虐待や財産の使い込みが疑われ、市区町村長(首長)の後見申し立てに至るケースもある。
岡山 介入判断弁護士助言
岡山市が3月上旬に開いた「高齢者虐待防止アドバイザー会議」では、情報が寄せられたある事例について、首長申し立てをするかどうか話し合っていた。認知症の80代の母親はあざだらけで、50代の息子による虐待が疑われた。息子は無職で、母親の年金に依存して暮らしていたため、首長申し立てをすれば反発を招く可能性もあった。それでも岡山市は申し立てに踏み切った。弁護士や司法書士らのグループ「岡山高齢者虐待対応専門職チーム」が、「一刻も早く市が介入して救うべきだ」と助言したからだ。
チームは圏内の約7割の自治体に出向き、高齢者の救済を促している。朝日新聞の家裁への調査では、岡山県は14年の首長申立件数は全国で7番目に多い210件。人口比ではトップだった。
東京都町田市も首長申し立てには積極的で、14年度は19件申し立てた。担当者は「速やかに手続きすれば虐待や孤独死の防止につながる。結果として財産負担も減る」と話す。
宇都宮 「親族への確認に時間」
一方、調査からは自治体ごとの温度差も浮かび上がった。栃木県は、岡山県とほぼ同じ人口だが、申し立ては32件にとどまる。担当者は「親族の意向確認に時間がかかる」という。
申し立てには、親族の戸籍を取り寄せたり、対象者の診断書や財産目録を作ったりして家裁に提出する必要がある。東北の自治体担当者は「手間がかかり、申し立てが急に増えても対応できない」と説明する。
進む孤立化 地域の目「必要」
支えが必要な人のうち、首長申し立てなどで救済に至るのは限られたケースとみられている。
新潟県社会福祉協議会は13年、県内のデイサービスや老人ホームといった福祉事業所の利用者などを対象に、「本来は成年後見が必要」とみられる人の数を調べたところ、少なくとも5653人いた。このうち首長申し立てが必要とみられる人は1229人いた。圏内の13年の首長申し立ては47件にとどまる。県はマニュアルを作ったり研修を開くなど、対策に本腰を入れ始めた。
中央大学の新井誠教授(民法)は「家族のつながりが弱まる中、首長申し立てで救うしかない人は増えていく。自治体が積極的に手を差し伸べていくべき」と話す。新潟大学の上山泰教授(民法)は「地域全体で成年後見の知識を高め、支援が必要な人をすくい上げるネットワーク作りを進めていくことが必要」と話す。





