新生児 発症前治療へ前進――血液検査でわかる病気19疾患に拡大

2015/04/06

朝日新聞 2015年3月24日

  生まれたばかりの赤ちゃんに先天性の病気がないかを調べる検査「新生児マススクリーニング」が、昨年4月から新しい分析法に切り替わった。数滴の血液からわかる病気が、それまでの6疾患から19疾患に増えた。発症前に治療を始めることで障害を防ぐ効果が期待されている。

 新生児マススクリーニングは、障害が出たり命を脅かしたりする可能性のある先天性の病気を見つけ、発症や障害を防ぐのが目的。1977年から始まった。現在一次検査の費用は原則無料で、ほとんどの新生児が受けている。

 当初は、フェールケトン尿症などアミノ酸代謝異常症3疾患と糖代謝異常症、先天性の内分泌疾患2疾患の計6疾患しか判定できなかった。その後、「タンデマス法」という分析法が開発され、有機酸代謝異常や脂肪酸代謝異常など新たに13疾患がわかるようになった。この分析法は2014年4月から全国で導入された。

 国立成育医療研究センター研究所の松原洋一所長(臨床遺伝学)は「障害を予防できることが、この検査最大のメリット」と話す。島根大学の山口清次教授(小児科)によると、発症後に有機酸代謝異常と診断された108人のうち52%に後遺症が残り、30%が亡くなった。新生児マススクリーニングで発症前にわかった39人では、90%が障害なく成長したという。

支援体制の不足課題

 検査を経て診断が確定したら、赤ちゃんの治療と家族への支援が必要となる。しかし、いずれの病気を患者が少ないため、この分野専門の小児科医が限られる。

 家族会には「先天性代謝異常症のこどもを守る会」「難病のこども支援全国ネットワーク」などがあり、親たちからの相談に乗っている。ただ、珍しい病気が多く、わかる人がいない場合もあるという。

 守る会代表の柏木明子さんは「親や患者の不安を少しでも取り除き、学校などの疑問に答えるわかりやすい冊子や、専門医やカウンセラーによる相談窓口が必要」と訴える。

 患者は定期的に通院が必要で、就学・就職では周囲の理解が求められる。医療費や低たんぱく食の費用など、経済的な負担も大きい。島根大学の山口教授は「成人後も継続して治療を受けられるように、診療体制の整備大量費の女性が必要だ」と話す。