受精卵の全染色体 検査

2014/12/06

朝日新聞 2014年11月26日

 体外受精させた受精卵の染色体を調べ、異常のないものを子宮に戻す「着床前スクリーニング」について、日本産科婦人科学会(日産婦)の倫理委員会は25日、臨床検査として実施する計画案を了承した。

 日産婦のこれまでの指針では、重い遺伝病があったり流産を繰り返している夫婦に限って、原因となる特定の染色体を調べることを認めている。今回の着床前スクリーニングは、流産を防ぐ目的ですべての染色体を調べるため、様々な病気が分かる。「命の選別」につながるとの批判もあり、これまでは認められていなかった。

 しかし、すでに実施している欧米では妊娠率が上がったとの研究結果もある。日本でも効果の有無を確かめるべきだとの意見を受け、学会は2月に小委員会を作り、臨床研究の計画案をまとめた。計画案では、体外受精を3回以上受けても妊娠できなかったり流産を繰り返した女性を対象に、数百人規模で、検査で受精卵を選んだ人と検査を受けない人で、出産率に違いがあるかを調べる。

 現行の受精卵検査で一定の実績がある医療機関に限って、3年間程度実施する。

 日産婦は、臨床検査を認めたとしても、当面は指針を改めないとしている。

 日本ダウン症協会の玉井邦夫代表理事は「受精卵を選別する技術がある中、研究として実施することまでは反対しない。ただ、その結果は学会内だけでなく、一般の人にもわかるように公表して欲しい」と話す。

 臨床研究によって、この検査で赤ちゃんが生まれる率が高まることが確認されれば、子を望む夫婦には朗報になるだろう。ただ、高齢の女性の場合戻せる受精卵が見つからないことがあったり、必ずしも流産にならない異常まで見つけてしまったりする。受精卵の段階で異常を排除する決断は、胎児の中絶に比べて抵抗なく行われる恐れがある。

 昨年4月から臨床研究として始まった、新型出生前検査(妊婦の血液で胎児の染色体を調べる)では、異常が確定した人の97%が中絶を選んでいた。着床前スクリーニングを認めることは、結果として「命の選別」の機会を増やすことになる。広く議論することが必要だ。