【主張】成年後見を受けた人の、選挙権を回復しよう  CAN代表 山本正志 

2012/03/23

 日本は普通選挙の、民主主義の国です。昔々は男だけとか、高額納税者だけに選挙権がありました。しかしそれでは近代国家と言えないので、今日では誰にでも選挙権があります。障害があっても選挙権はありますから、選挙通知が届きます。知的障害や認知症がある人の中には候補者名を自書できない人もいますが、それでも選挙通知は届きます。障害の有無を理由にして選挙権をはく奪することは、基本的人権の侵害ですから、それはできないのです。実際のところ、知的障害や認知症があっても候補者名を自書できる人はたくさんいますから、一人一人審査してその適格性を判定することは不可能です。そもそもそんなことを法律上許せば、普通選挙の崩壊に道を開きます。それよりは選挙権をすべての人にまず認め、自書できない人が結果的には棄権になっても普通選挙を維持する方が、民主社会を守ることになります。

実は選挙権がはく奪される場合は、公職選挙法第11条に規定されています。刑法犯や選挙違反犯で、禁固刑以上が執行中の人だけです。こうした人は民主社会の秩序を乱した人なので、一時的に選挙権=基本的人権が制限されます。でも、刑期が終われば選挙権が回復されます。終身はく奪されるわけではありません。

ところが選挙権がはく奪される場合が、もう一つ規定されています。成年後見を受けた人です。成年後見を受けた人は、何も悪いことをしていません。ただ知的障害や認知症や精神障害があり、経済生活を送るうえでエセ商法やサギにあう心配が高いので、後見人の支援を受けている人なのです。ところが成年後見を認定されると引き換えに、選挙権をはく奪されることになっているのです。しかも終身に。これは明らかな欠陥法であり、法による差別です。普通選挙の趣旨にも反します。

なぜこんなことが起こったのか。それは禁治産制度を成年後見制度に作り変える際の、ミスです。制度の趣旨が変わったのだから同時に点検すべき項目だったのに、漏れてしまったのです。おそらくは法律家や政治家に、障害者欠格条項の思想が染みていて、この不合理に気付かせなかったのではないでしょうか。

この不合理を、改めさせましょう。成年被後見人の選挙権を、ぜひ回復しましょう。公職選挙法第11条第1項を改正すれば、それで回復するのです。