高次脳機能障害の人への支援について

2011/03/15

PDF版はこちら「高次脳機能障害の方への支援と対応方法」(218KB)

被災現場では、様々な情報が飛びかっています。被災者は不安から不正確な情報に左右され易いので、
正確な情報提供が必要です。高次脳機能障害がある方は、一見障害があることがわかりにくいですが、
不慣れな環境に対して混乱したり、困惑したりしやすいため、情報を正確に理解できないことがあります。
脳損傷後の方で以下のような症状が出ている場合、高次脳機能障害の可能性があり、支援が必要です。
落ち着いた環境で、適切に対応できれば、問題が少なく行動できます。周囲がこの障害と対応方法を
知って、適切な対応を心がけることが大切です。

◆高次脳機能障害とは

事故や病気などの原因で脳の一部が損傷を受けた結果、記憶・意思・感情などの高度な脳の働きに
障害が現れることを、高次脳機能障害といいます。身体的な後遺症がないことが多いため、一見障害
がわかりにくく、本人自身も障害の認識が難しかったり、周囲の理解が得られなかったりすることで、
生活に支障が出ます。

身体的な後遺症がない方が多いため、一見障害がわかりにくく、本人自身も障害の認識が難しかったり、
周囲の理解が得られなかったりすることで、ご本人やご家族も性格上の支障について、原因を正しく
理解していない場合が多いです。そのため、本人には障害を指摘するよりもまず環境を整えることを優先に、
そして、周囲の人々には障害のために下記のような症状が出ていることを理解してもらうよう伝えることが
大切になってきます。

◆高次脳機能障害の症状と対応方法

症状 対応方法

感情と行動の障害

・疲れやすく、日中起きていてもボーっとしている
(意欲や発動性が低下している)

・後先や状況を考えずに、行動や発言してしまう。
・少しの時間でも待てずに、我慢できず腹を立て
大声を出してしまう。
・些細なことにこだわり続けることがある。

・過密スケジュールにならないように、気をつけて下さい。
・本人に、怠けていると言わないで下さい。
・言葉がけやアラーム、タイマー等で、起床や外出等の活動開始の合図を出します。
・一日のスケジュールを書き出して下さい。
・困った時は誰に相談したらいいのかあらかじめ伝えてください。
・問題を起こした時は怒ったりせず、何が問題かはっきり指摘して下さい。
・本人の訴えを確認するために話をじっくり聞いて下さい。
・興奮している時は、場所や話題を変えて、興奮が治まるのを待って下さい。
・動作の合間に「一時停止」するように促して下さい。また、行動する前に、他人に話してもらうのもよいでしょう。

注意障害

・同時に二つの作業ができない。

・集中できず、注意散漫になる。
・左側、もしくは右側を無視してしまう。

・一度に多くの作業をせず、一つ一つ行ってもらう方がよいです。
・注意事項を紙に書いて、目に付く場所に貼っておくとわかりやすいです。
・情報量が多い時は、重要な場所に線を引くとわかりやすいです。

記憶障害

・新しいことを覚えられず、すぐに忘れる。
・人の名前や、作業の手順が覚えられない。
・たった今起きていることが思い出せない。

・情報を紙に書き、必要なら図式化して下さい。
・チェックリストやアラーム、タイマー等を使うと、約束を思い出させるきっかけ作りになります。

遂行機能障害(計画を立てて、その通りに物事を進めることが難しくなる)

・要点を絞り込むのが困難。
・より良い解決策を選択できない。
・一つ以上の考えが思いつかない。
・優先順位がつけられない。

・伝達内容の要点を具体的に、また段階的に伝えて下さい。
・行動する内容を、事前に本人に言葉に出して確認してもらう、また手順を書いてもらうと行動がスムーズに行いやすいです。

また、共通として

  • ゆっくりと話しかけること
  • できるだけ静かな、刺激(物音や人)の少ない場所で対応すること
  • 情報(何時に何があるのか、今どのような状態なのか)を正確に伝達できるように、短い文書で
  • 支援者間で引き継ぎを行い、共通の対応をすること

という環境調整・対応をすることで、本人に情報が伝わりやすく、安心感につながると思われます。

その他、詳しくは以下のHPもご参照ください。

「普及啓発用パンフレット」(広島県立障害者リハビリテーションセンター)
「パンフレット」(千葉県身体障害者福祉事業団)