

摂食・嚥下障害をもつ人への支援について
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◆摂食・嚥下障害とは
脳卒中の後遺症や、運動障害をもつ人、また、お年寄りや体力が弱っている人の中には、
食べる・飲むことが十分にできないという、摂食・嚥下障害をもつ人がいます。
中には、飲み誤ったものが気管の方へ入る(誤嚥)ことで肺炎を起こしたり、
食べ物が喉につまって息ができなくなる(窒息)こともあり、危険です。
命にかかわる障害ですが、本人も周囲もこの障害に気付いておらず、見過ごされていることが
少なくありません。以下のような症状がみられる場合は、注意が必要です。
◆こんな症状に注意
- あまり噛まずに飲み込んでいる
- 飲み込んだ後も口の中に食べ物が残っている
- 食事中によくむせる、吹き出す
- 食後に痰が絡んだような咳が出る
- 発熱を繰り返す
- よく肺炎や気管支炎になる
- 痰が増えた
- 食べる量が減ってきた、あるいは食べようとしない、食べた後の声の様子がおかしい
(何かがひっかかったようなゼロゼロした声など)
◆摂食嚥下障害を持つ人への対応
対応はその人の状態によって違います。食事方法を工夫することで安全に食べられる人もいれば、
口から食べること自体が危険で医師から禁止されている人もいるので、対応についてはできれば
専門職(医師・歯科医師、保健師、看護師、言語聴覚士・栄養士など)に相談してください。
★しかし、被災地など、専門職にかかることができない場合に少しでも安全に食べていただくため、
摂食嚥下障害を持つ人にとって一般的にリスクが少ない食事方法について、以下に記します。
1.食べ物の形を変える
一般的に、食べやすい・飲み込みやすいもの(嚥下食)
やわらかい・適度な水分や油分を含む(パサパサしていない)・口の中でバラバラになりにくく
まとまりやすいもの
(例)軽度の人には=やわらかめに炊いたご飯や繊維の多くない野菜、煮魚など
中度の人には=粥、煮くずした繊維の多くない野菜や魚など、
あまり噛まなくても飲み込める状態の食事
重度の人には=ゼリー、プリン、ヨーグルト、ペースト
(ミキサーをかけるか、すりつぶしてトロミ付けをした食事)など
食べにくいもの
固い・パサパサしていて水分・油分が少ない・口の中でバラバラになる・粘りが強いもの
(例)肉、パン、こんにゃくゼリー、クッキー・クラッカー類、生野菜、焼き魚、餅など
2.水分、汁物にトロミを付ける
飲み込みのスピードが遅くなると、サラっとした普通の水分はむせやすく危険です。
飲料や汁物などの水分でむせている場合は、飲料や汁物に市販のトロミ剤(増粘剤)で
ポタージュ状〜ヨーグルト状のトロミをつけてみてください
(あまりドロっとしすぎると逆に飲み込みにくくなります)。
★被災地などで嚥下食の準備が難しい場合の工夫
- 市販の嚥下食・介護食などのレトルト食や、ウィダ―インゼリーなどゼリー状の食事や飲料、
プリン・ヨーグルトなどを取り寄せる(可能であれば) - ベビーフードが手に入れば、それに調味料で少し味付けをする
- 米飯・おにぎりなどは、湯を少量まぜてつぶし、粥状に近づける(水分でむせる場合は除く)
パンは、そのままの状態では喉につまりやすいため、適度な水分(あれば牛乳など)を加えて
どろどろのパン粥にするとよい。 - おかずも、固いものは出来るだけ皿の中でスプーンを使って押しつぶし、
少量の汁気と混ぜてばらけにくい状態にする。
マヨネーズがあれば、マヨネーズであえるとまとまりやすい。 - 固い食品とやわらかい食品が両方ある場合は交互に、できればとろみをつけた水分と
交互に食べてもらう。
3.食べる姿勢を変える
- 背中を30度〜60度ぐらいの角度(枕や布団などで調節)に傾けて、顎を引いて
(首の下にタオルなどを入れて顎がのどにつくような状態に調整)食べる。 - 自力で座れない人でも体が起こせるなら、できれば車椅子(あれば)に座って食べてもらう。
4.食べる速度や量を調節する
- 速いスピード、たくさんの量ほど危険
→1度に口に入れる量は少なめ、ゆっくりとしたペースになるように
5.食事環境を整える
- 必ずしっかり眼を覚ました状態で
- 口に食べ物が入っているときは、飲み込むまで話しかけない。
本人が食べながらしゃべろうとする時は飲み込んでから話すように促す。 - できるだけ気を散らせる刺激は遠ざけ、食事だけに集中できるような環境にする
6.食事の前に
- 口の中を清潔にするよう、乾燥している場合は少量の水分で拭いて湿らせる。
7.食事の後に
- 口の中を清潔にする(水分が危険な場合はうがいを避け、歯ブラシ等を使って掻き出す)
- すぐに横になってしまうと食物が逆流しやすく、危険なので、
食後しばらくは座っているか、少し上半身を起こしておく。