学校をひらく 同じ場で それぞれの学びを(一般社団法人UNIVA理事 野口晃菜さん寄稿)

2026/06/02

朝日新聞 2026年4月15日

「インクルーシブ教育」は、「障害のある子どもとない子どもが共に学ぶこと」と定義されることが多いが、ただ多様な子どもが同じ場にいることではなく、多様な子どもがいることを学校の「ふつう」にしていく、そのために学校のあり方を変革していくことが重要だ。

現在は、通常の学級には教師が1人、そして学習指導要領で学ぶべき目標や内容などが決められている。つまり、通常学級に在籍したら、全員が同じ目標を同じペースで学ぶ前提になっている。目標を変えたり、学ぶペースや方法を大きく変えたりする場合は、特別支援学級に在籍すれば、8人に対して1人の先生がおり、「特別の教育課程」を編成できる。特別支援学校では、教材教具が障害ごとに整備されており、先生もさらに多く配置されている。障害のある子どもも通常の学級に在籍できるが、その場合は基本的に他の子どもと同じ構造の中で学ぶシステムになっている。

特別支援学校や特別支援学級に在籍する子どもも「最大限」「ふつうの教室」に在籍する子どもたちと共に学ぶ機会を設ける「交流および共同学習」の制度もあるが、その機会は年に2~3回しかない。それで果たして「共生社会」につながるのだろうか。

障害のある子どもやその保護者からすると、近隣の学校に通いたいけれど、それでは必要な学びが得られない。一方で、遠くの特別支援学校に在籍すると、地域の人と日常を共にする機会が失われる。さらに、教職員からしても、通常の学級で最大限多様な子どもの学びを保障したいけれど、一人で頑張らざるを得ない、その子の学びを保障しようとしたら別の場への在籍を勧めないと、資源が追加されない。インクルーシブな学校づくりをしたい、インクルーシブな場で学びたい、と教職員や保護者、子ども自身が願ったとしても、在籍する場と教育課程、さらに資源がひもづいている構造が大きな障壁になっている。

現在、中央教育審議会では、学校指導要領の改訂に向けた議論が行われている。2025年9月の論点整理では、①「主体的・対話的で深い学び」の実装②多様性の包摂③実現可能性の確保の3つが柱として掲げられている。②が教育全体の方針として掲げられたのは初めてだろう。この方針は、教育活動全般の土台に「多様性の包摂」を置く、ということだ。

自分たちが想定できる「多様性」には限界があること、つまり「多様性」や「共生社会」について、大人は子どもたちに「教える」立場ではなく、「共に学ぶ立場」であることを踏まえていきたい。その上で、自分と異なる価値観や背景のある他社と対話をしてみるところから一緒に始めてみよう。