
悩み抜き 会えたあなた 出生前検査で「ダウン症」向き合った家族
朝日新聞 2026年4月6日
妊婦の血液で胎児の染色体を調べる出生前検査(NIPT)が広がっている。検査で「陽性」となった時、孤独と焦りを感じながら、家族は悩んでいる。
2025年11月、ダウン症の本人や家族、専門家らが集まる学会で初めての試みとして「本人座長」がシンポジウムを紹介した。兵庫県の上村眞穂さん₍16₎は「出生前検査」の座長を務めた。眞穂さんが生まれた頃、NIPTはまだなかった。母親の直美さんは妊婦13週のときエコー検査で「ダウン症」の可能性があると指摘された。確定検査となる羊水検査を受けるか、直美さんは悩んだ。もし検査でダウン症とわかったら、妊娠をそこで終えるかという選択肢が出てくる。ダウン症について本で調べてみたものの、怖くなった。どんな子も産み育てるという強い思いがあったわけではない。考え続けた結果、「自分の判断でこの子の命を奪うことはできない」という気持ちが強かった。生むと決め、羊水検査は受けなかった。出生前に分かった分、備えられたこともある。おなかにいたときから心臓に病気がある可能性が分かり、出産は小児循環器科もある病院を選んだ。
眞穂さんは今は、大阪府内の高等専修学校に1人で通っている。ダンス部に入り、とても楽しそうだ。母の直美さんは「今の一瞬を大事にすることを眞穂に教えてもらった」と話す。ダウン症の親子サークル代表などをしている直美さんは、「NIPTで陽性となったが、どうやって育てたらいいか、仕事は続けられるのか」といった質問を寄せられる今は保育園などの受け入れが広がり、放課後デイサービスも充実している。「社会がよい方向に変わってきていることは間違いない」と直美さんは言う。
シンポジウムには、ダウン症のある娘を育てる別の女性も登壇し、「それぞれの家族が悩み抜いて決めたことを尊重する」と前置きした上で「同じ悩みを抱える家族が心穏やかに過ごせるように」と、体験を話した。不妊治療の末に授かった第1子、NIPTで陽性、羊水検査でも陽性だった。すでに妊娠17週に入り、赤ちゃんはよく動くようになっていた。夫婦で腹を割って話すことが難しいまま20週を過ぎ、「最後はこの子の生命力に委ねよう」と決断した。女性は、親にも周りの友人にも悩みを打ち明けられずに悩みを抱えていたことを率直に語った。「これからも毎日大好きだよ、愛してるよ、と伝えていきたい」と締めくくった。
日本ダウン症協会では、女性の話の内容をHP(http://jdss.or.jp/)に掲載している。
2013年から始まったNIPTは検査数が増え、24年度に学会認証施設で実施した妊婦は6万3千人。うち1.1%に陽性結果が出ている。過去には、陽性が確定すると、9割の人が妊娠の中断を選択しているデータもある。
日本ダウン症協会はダウン症のことを正しく知ってもらうための啓発活動を続けている。協会の理事・水戸川真由美さんは「どんな子どもも安心して育つ社会になること、妊娠した人がおめでとうと言われる社会であることをめざしていきたい」。





