
就業制限、全員「違憲」 障害者差別ない社会へ
毎日新聞 2026年2月19日
旧警備業法の就業制限規定をめぐる18日の最高裁大法廷判決は、障害を理由とした差別の禁止を明確化するようになった社会の変化を重視し、違憲判断を導いた。
大法廷で問われたのは、誰もが差別されることなく暮らせる社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念だ。国連は1981年を「国際障害者年」と宣言し、障害者の社会への完全参加と平等をうたった。だが、日本では1982年警備業法が改正され、成年後見の前身の「禁治産制度」の利用者に対して就業制限規定が盛り込まれた。
他にも障害を理由に資格や許可を与えない「欠格条項」は多くの法律に存在した。障害者が声を上げ、国は2000年代に入り、医師免許など約60制度で欠格条項を撤廃した。ただし、成年後見制度利用者の就業を制限した規定は100以上の法律に残ったままだった。国連は2006年に「障害者権利条約」を採択、条約に署名した日本は障害者差別解消法の制定(2016年施行)や障害者雇用促進法の改正で国内法の整備に取り組んだ。2014年に条約を批准し、国内でもノーマライゼーションの理念が浸透していった。
大法廷はこうした歴史的経緯に沿って就業制限の違憲性を判断した。規定が設けられた1982年は警備活動領域拡大に伴い、業務の適正化を図る必要があったと指摘、警備業には様々な事象に臨機応変に対応する能力が求められることから、当時の状況下では相応の合理性があったとした。だが、条約署名後国内法整備などを通じて「障害者の権利のあり方が大きく変容することになった」と言及。原告団性が退職した2017年3月までに既定の合理性は失われ、憲法22条「職業選択の自由」と14条「法の下の平等」に違反したとの結論を導いた。裁判官全15人が一致したことで重みのある司法判断となった。
一方、1,2審が認めた国が法律改廃を怠った立法不作為については、判断を一転させた。これに対し、5人の裁判官は反対意見で国会には立法不作為が認められ、賠償金を支払うべきだとした。
原告団性は「障害があろうがなかろうが、できることはできる。知高裁が違憲と認めたのはうれしい」と語った。男性には軽度の知的障害があるものの、業務で判断ミスをし事故を起こしたことはなかった。社会に出て働くことや会社からの信頼に喜びを感じていた。デイ年後見制度を利用したのは、親族が勝手に預金を引き出していたからだが、会社からは当時の規定を理由に雇用契約の終了を告げられた。弁護団は、国の賠償責任が否定されたことに不満は見せつつ、「判決は障害者に対する過剰な権利侵害を指摘し、個人の能力を尊重する後押しになる」と一定の評価を示した。熊田均弁護士は「(改正後の法律の)運用をしっかりチェックしていく必要がある」と指摘した。
国の障害者施策委員会のメンバーを務めた専修大の棟居快行教授(憲法学)は、最高裁が障害者を取り巻く状況の変化を細かく検討したことを評価する一方で、障害者に対する政策の遅れや国民の理解が醸成されていなかったことが国の賠償責任否定につながったと指摘。「明確に違憲としたことには意義があるが、賠償責任が否定されたことで、障害者が逆にツケを払わされたとも読める。判決は社会が障害者とどのように向き合うかを投げかけており、一人ひとりが考える契機とすべきだ」と話した。





