
合理的配慮求めたら「じゃあ辞めろ」 吃音の新入社員が浴びた暴言
毎日新聞2025年11月11日
吃音の30代男性は勤務先の建設会社で電話応対を強いられたうえ、上司や同僚に暴言を浴びせられたりからかわれたりした。障害者手帳を取得して会社側に配慮を求めても一向に改善されなかった。耐えかねた男性は行動を起こした。
男性は小学校低学年から吃音があり、「難発」の症状がみられた。いまも電話応対をするときなどに言葉がすぐに出てこないことがある。事務系総合職の正社員として入社し、営業所に配属された。固定電話で社内外とやり取りすることが多かった。話す場所を選べない固定電話は恐怖だった。営業所に勤務する技術系の社員は現場に出払い、男性は上司と2人きりになることが多かった。入社1年目、鳴る電話を取るのをためらっていると、上司に叱られた。吃音で電話応対が苦手と伝えても聞き入れてもらえなかった。同僚からも電話口で「なんでそんなことが言えないんだ」と怒鳴られ、名前が言えなかった時には笑われた。吃音だと伝えても謝罪はなかった。
障害者雇用促進法は事業者の負担にならない範囲で、障害者からの申し出により特性に配慮した必要な措置を講じなければならないと定めている。男性は障害者手帳の取得を決め、上司にその意向を伝え、電話応対から外してもらうなどの配慮を求めた。すると上司は言った。「じゃあ辞めろ」「やめてから手帳を取れ」「(吃音を)隠して入ったんだろ」
男性は手帳を取得し、医師に「電話での発話に強い不安を伴っている」という診断書も書いてもらった。しかし何も配慮がなく、電話応対から離れることはできなかった。上司はさらに辛らつな言葉を重ねた。「身を下げろ」「エリア社員への降格を申し出ろ」電話応対への恐怖に加え、長時間労働もあり、夜眠れなくなり、吃音も悪化した。3年は続けるとしがみついてきたが、限界だった。障害者向けの合同説明会に参加し、転職した。
転職した会社に吃音のあることを伝えたところ、固定電話を取ることを免除された。固定電話にかかってきた男性宛の電話は携帯電話に転送されるよう配慮してくれた。障害者手帳の有無にかかわらず障害のある従業員が相談できる窓口も設けられている。男性は、障害の有無に関係なく一人の人間として尊重されていると感じるという。この会社と建設会社の対応の差を冷静に見つめることができるようになった男性は建設会社の対応には問題があったと考え、2023年8月、労働組合「総合サポートユニオン」に相談した。
組合のアドバイスを受け、2024年10月から会社側に合理的配慮がなかったことへの謝罪などを求めて組合とともに交渉した。3回の交渉を経て、会社側は謝罪文を提出し、慰謝料や未払い賃金として解決金220万円を支払った。
総合サポートユニオンの佐藤学さん₍38₎は「法律や制度があっても、障害者の権利は守られておらず、差別もまだまだ根強い。差別に遭った時は証拠を残し、相談機関や労働組合、弁護士とつながっておくことが大切だ」と指摘する。
男性は「障害の有無に関係なく個人として尊重される今はとても幸せだ」という。





