難聴時の逸失利益「同額」 減額は公平性「顕著に」妨げられる場合のみ 大阪高裁判決

2025/01/22

朝日新聞 2025年1月21日

大阪市生野区で2018年、聴覚支援学校に通う井出安優香さん(当時11)が重機にはねられ死亡し、将来得られたはずの「逸失利益」が争われた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁₍徳岡由美子裁判長₎は20日、健常者と同額を認めた。健常者と同額とした司法判断は初めてとみられる。

高裁はまず、子どもの逸失利益の算定では一般に個人の能力を問わず平均賃金を使っているとし、「あえて減額することが許されるのは公平性が顕著に妨げられる」ようなケースに限られるとの判断基準を示した。

安優香さんは学年相応の学力があってコミュニケーション能力は高く、難聴があっても「補聴器や手話を活用し、健常者に劣らない能力を発揮していた」と指摘。障害者が直面する壁は社会が合理的配慮で取り除くべきだとの考えのもと法整備がなされ、技術革新が進んでいることも踏まえれば、将来は「ささやかな合理的配慮」で健常者と同じ条件で働けると予想できたとした。その上で、平均賃金で算定することに顕著な妨げとなる事情はなく、減額する理由はないと結論づけた。被告側は60%が相当だと主張、一審判決は「聴覚障害が労働能力を制限しうることは否定できない」として平均から15%減額したため、遺族側が控訴していた。して控訴していた。

この日法廷には4人の手話通訳人が配置され、傍聴人への同時通訳も実施された。