まるで漫画!歓声や打球音が「見える」 聴覚障害者の新たな観戦体験

2025/01/11

朝日新聞 2025年1月7日

聴覚障害のあるアスリートの国際大会「デフリンピック」が11月、日本で初めて開かれる。各国から約3千人の選手の参加が見込まれるスポーツの祭典で、聴覚障害者の観戦をサポートするためにAI(人工知能)技術の活用が期待される。

まるで漫画を見ているかのような観戦体験だ。

卓球の選手が球を打つと「カッ」という効果音が瞬時に画面に映し出される。対戦する2選手が発する音は黄色と赤色に分けられ、どちらが打ったのか一目瞭然。スマッシュが決まると「コォーン」と現れた。拍手や歓声、試合進行に関する情報も文字で示される。拍手は音量に応じて文字の大きさが変わる。(記事では、仕組みについても説明されている)

競技中の音の迫力や臨場感を可視化するシステム「ミルオト」は、デザイン会社「方角」₍東京都渋谷区₎や早稲田大学岩田研究室が協力して開発した。開発者たちはこれまでも障害者の困りごとをデザインや技術の力で解決してきた。その過程で、聴覚障害者たちがスポーツ観戦する際、プレー中の音や歓声が聞こえないため、試合の進行状況や盛り上がり具合が分からず、疎外感を味わっていることを知った。方角の方山れいこ代表取締役は「公的な情報保証は整備されてきたが、エンターテイメントの分野ではまだまだ。エンタメも生活の一部、そこを解決したかった」と話す。早大の岩田浩教授は「ミルオトがスポーツバーなどでも使われれば、障害のあるなしにかかわらず全員が同じタイミングで盛り上がれる。このデフリンピックをきっかけにしたい」いずれは五輪やパラリンピックでも――、開発者たちはそんな未来を思い描いている。