障害者手帳、得た安心 職場理解に「有効な選択肢」

2024/12/23

毎日新聞 2024年10月8日

吃音を「障害」と捉えることに抵抗感を抱く人も少なくない中、吃音の当事者が、職場での配慮を求めて障害者手帳を取得するケースが目立っている。安心して働くために「手帳取得は有効な選択肢」と考える人が増えているという。

吃音者の多くが就職後に苦しむのが、電話応対やあいさつなど、基本的なコミュニケーションだ。今春就職した男性は、職場で望む合理的配慮について会社側と確認しあった。障害者雇用枠での採用を望んだのは、吃音が理由で就職活動が不利になると考えたからだ。男性は、「手帳を取得して「障害者」と認められることに葛藤はなかった、職場で配慮を受けられる安心感は大きい」と話す。

吃音が原因で仕事をやめ、手帳取得後に再就職した男性は、「障害があることを前提に求職活動をすることで、できること、できないことを採用の入り口段階で明確に伝えられたことは大きい」という。

吃音を「個性」と捉えるのか、配慮が必要な「障害」とするのかを巡っては、当事者でも意見が分かれる。自身も吃音者である筑波大の飯村大智助教(障害科学)は、「吃音が障害か否かという議論は本質的には意味がない」、「吃音者にとって生きにくい構造が社会の側にあるならば、社会の方に障害があると考えるべきだ。本人が必要と考えるなら手帳の取得は有効な選択肢の一つとして考えるべき」との見解だ。

吃音が障害者手帳の交付対象であることが当事者の間でも広く認識されるようになったのは2010年代に入ってからだ。NPO法人「全国言友会連絡協議会」(全言連)などによると、障害者差別解消法の施行(2016年)など、障害者の権利を尊重する動きが社会に広がったことが影響した。全言連の斉藤圭祐理事長は「各地の言友会でも手帳取得者が増えている、特に若い当事者はほとんど抵抗感がない」と指摘。「全員が必要としているわけでなないが、吃音は外見からは理解してもらうのが難しいので、周囲に支援を働きかけるには有効な手段の一つ」と話した。