オピニオン&フォーラム 吃音のある人いたら

2024/12/20

朝日新聞 2024年11月15日

大人100人に1人の割合でいるといわれる吃音のある人。周囲や社会に何が求められるのか、当事者でもある識者3人に聞いた。

「吃音ドクター」として知られる菊池良和さん₍医師₎は、話し手が話し終わるのを待ち、話し手のペースに合わせて会話を続けるよう向き合ってほしい、吃音の人にも「合理的配慮」は必要、吃音が話し方の多様性の一つとなり、「吃音があってもいい」と自分を肯定していける社会に向かうことを願う、と語った。

身体論の観点から吃音や病を持った人の研究をしている伊藤亜紗さん₍美学者₎は、体が思い通りにならないことは思いがけないことを連れてくる、発音しづらい言葉を避けて言い換えた経験から、言葉に対してより繊細になることは可能性だ、健常であることだけが美しいのではなく「吃音もいいよね」と感性を広げていくことが大事ではないか、と話した。

『吃音 伝えられないもどかしさ』の著者、近藤雄生さん₍ライター₎は、吃音のまま就職するのは難しいと感じて海外に旅に出た、2013年から吃音当事者や支援者らを取材し出版。症状は治まっていたが再び出始め、自分の周りに壁が現れ周囲から隔絶されてしまったように感じた。そのころ知り合った重度の吃音のある若者は差別的なことを言われた時の悔しさをつづってきた。その時、「なんだあのオヤジ、吃音のつらさも知らないで」とか「何か言われたら、僕が言ってあげます」と言ってくれた若者がいて、その言葉がとてもうれしかったそうだ。社会が変わることは大事だが、時にはそれ以上に隣にいる人の想像力こそが救いになり、力になるかもしれない、と言う。