聴力障害者の逸失利益制限 遺族側「対等に働けた」

2024/10/02

朝日新聞 2024年9月4日

大阪市生野区で2018年、聴力障害のあった井出安優香さん(当時11)が重機にはねられ死亡した事故で、逸失利益が争われている訴訟の控訴審が3日、大阪高裁で結審した。遺族代理人が「聴力障害を理由に労働能力が制限されるという言説は偏見だ」と意見陳述した。判決は来年1月20日。

亡くなった人が将来得られたはずの「逸失利益」について、一審大阪地裁は「平均賃金の85%」とし、健常者と同じ水準を求める遺族側が控訴している。

控訴審では、遺族代理人で、自身も重い難聴がある久保陽奈弁護士が意見陳述に立った。久保弁護士は、人とやり取りする方法は音声以外にあり、手話や文字だけでなく、今ではAI(人工知能)技術を活用した音声認識システムも発達していると説明。「聴力障害のある弁護士や医師など多くの人がこれらを活用して能力を発揮し、活躍している」と話した。久保弁護士は「社会は着実に変わりつつある」と指摘、「合理的配慮」が整備された環境であれば、「安優香さんが健常者と対等に働くことができていた」と訴えた。

閉廷後、安優香さんの父・努さん₍51₎は、「今月10日は誕生日で、生きていれば18歳だった。成長した姿を想像し、苦しい思いを押し殺して過ごしている。大阪高裁にはこれまでの判例にとらわれない判決を期待している」と語った。