強制不妊 最高裁「違憲」 国に賠償命じる判決 人権侵害重大 請求権消滅せず

2024/07/04

朝日新聞2024年7月4日

旧優生保護法(1948~1996年)下で不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、障害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長=戸倉三郎長官)は3日、旧法を「立法時点で違憲だった」とし、国に賠償を命じる判決を言い渡した。不法行為から20年で賠償請求権が消える「除斥期間」については、人権侵害の重大性に照らし「適用するのは著しく正義・公平の理念に反する」と判断した。

この判決は、5訴訟の原告に限らず、強制不妊手術の被害者の救済に全面的に道を開いた。「違憲」は15人の裁判官全員一致の結論。最高裁が法令を違憲と判断したのは戦後13件目で、立法時点で違憲だと明示したのは初めて。

判決は、旧法の違憲性について「不良な子孫の淘汰」を目的に不妊手術を認める規定は、「当時の社会状況をいかに勘案しても正当化できない」と指摘。生殖能力を失わせるという重大な犠牲の強制は、憲法13条が保障する「自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由」を侵害する、とした。また、障害がある人だけを手術の対象としたのは差別的取り扱いで、「法の下の平等」を定めた憲法14条にも違反する、とした。その上で、明白に違憲の法律をつくった国会議員の立法行為自体が「違法だった」と断じた。

大法廷は、当初から違憲と判断される立法で手術を進めた国の責任は重大で、時間の経過で賠償責任を免れるのは「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できない」と判断し、1989年の「不法行為への請求権は20年たてば消滅する」という判例を変更した。

大法廷は、二審で原告が勝訴した4件について国の上告を棄却、賠償命令を確定させ、原告が敗訴した1件は審理を高裁に差し戻した。