「手術で人生狂わされた」 強制不妊訴訟 原告ら、苦しみを3時間訴え

2024/05/31

朝日新聞 2024年5月30日

旧優生保護法をめぐる最高裁の弁論で、原告らは切実な思いを訴えた。法律論の前に、被害者が受けた苦しみを、人生を暗転させられた記憶を知ってほしい。5訴訟の弁護団に共通する思いだ。

東京訴訟原告の北三郎さん(81,仮名)は「手術のせいで秘密を抱え、人生は大きく狂わされた。67年も苦しみ続けた」

札幌訴訟の小島喜久夫さん(83)は「自分で自分の人生を決めたかった。それができなかったことが悔しいです」

5訴訟の原告側の訴えは約3時間に及んだ。「人生を返して」「せめて国に謝罪してほしい」。陳述の最後は、仙台訴訟の代理人で、全国優生保護法被害弁護団の共同代表の新里宏二弁護士が「憲法に反する国の行為を、裁判所が人権のとりでとして正すことが求められている。最高裁には、真に正義と公平にかなう判断を期待したい」と力強く締めくくった。

最大の争点は、最高裁が「時の壁」=除斥期間をどう扱うかだ。最高裁はこれまで除斥期間の考えを厳格に踏襲し、公害訴訟などでも救済の妨げになってきた。除斥期間の適用を認めなかったのは。例外的な2件のみだ。大法廷が今回の判決で、除斥期間の適用をどう考えるのか、適用しない場合はどのような理由を示すのかが注目される。

この日法廷内では、手話通訳、6ヵ所のモニターに資料や要約筆記之映写が配慮された。法定外でも傍聴希望者に手話通訳者が対応した。最高裁がこうした措置を同時に行うのは異例だが、当事者は不十分だと指摘。訴訟を支援する「優生保護法問題の全面解決を目指す全国連絡会(優生連)」は、障害者がアクセスしやすい環境が特に必要だとして、最高裁に対応を求めてきた。法廷内の手話通訳などの費用を裁判所が出すよう求めたが認められず、優生連が負担した。弁護団は弁論で「(裁判所に)尽力をお願いしたい」と要望した。