「#障害者を消さない」 力になりたい 3.11踏まえ 自閉症の兄を持つ兄弟が投稿 

2024/02/25

朝日新聞 2024年2月12日

「#障害者を消さない」というX(旧ツイッター)のハッシュタグに、共感が広がっている。能登半島地震で障害のある人たちが避難所から追いやられてしまわないようにと、東日本大震災で被災した兄弟が投稿を始めた。

投稿を始めたのは、知的障害者らのアート作品の企画・販売などを手がける「ヘラルボニー」(盛岡市)の共同代表で松田崇弥さんと文登さん。双子の2人には知的障害を伴う自閉症の兄翔太さん(36)がいる。能登で震災が起きた1月1日、崇弥さんは東北大震災で避難所に身を寄せたある母の、「大声を出す障害のある娘の口をガムテープでふさごうと思った」と言う言葉を思い出した。この親子は周囲に気兼ねして、避難所を離れたという。盛岡市にある松田さんの実家は大きな被害はなく、翔太さんは自宅で過ごすことができたが、「兄が避難所に行っていたら、パニックになっていたと思う」と崇弥さん。避難所にいられない人たちの姿は兄に重なった。

能登で地震があった日、いてもたってもいられなくなった崇弥さんは文登さんと相談し、「ヘラルボニー」としてできることを話し合おう」と、全社員に緊急会議を呼びかけた。翌朝オンラインで議論し、障害者が何に困っているのか、本当に必要な情報は何かを募り、社会に発信することを決めた。

「障害者が避難所から消えることがないように」との強い思いで「#障害者を消さない」というハッシュタグを考え、翌3日、Xで「障害のある人は必ずいる」などと投稿。同時に、障害者に役立つ情報を紹介する特設サイトを自社のホームページ内で公開し、困り事などを募った。すると、続々と投稿が集まった。投稿数は2月1日時点で760超。「差別はしてほしくないけど、区別はしてほしい。障害者トイレのように、福祉避難所も普及してjほしい」などの意見もある。

東日本大震災で障害者が避難所にとどまれなかった実情を題材にした映画「星に語りて~Starry Sky~」を制作した障害者団体「きょうされん」専務理事の藤井克徳さん(74)によると、能登半島地震でも、「避難所に居づらくて車中泊をしている」「避難所から自宅に戻る障害者がいる」と言った状況があるという。松田さんたちの取り組みについて藤井さんは、「災害時、障害者への支援は空白になりがち。当事者から寄せられる意見は、支援のあり方を考える上で貴重な手がかりになる。行政など多くの人たちに伝えてほしい」と期待する。

ヘラルボニーの特設サイト https://emergency.heralbony.jp/