阪神大震災29年 五感で継ぐ リアルな記憶 障害者や元消防隊員らの経験一冊に

2024/01/26

朝日新聞 2024年1月11日

この本は「五感でとらえなおす 阪神・淡路大震災の記憶」(関西学院大学出版会)。同大学(西宮市)社会学部の学生13人が調査をもとに考察した。「災害は視覚優位でとらえられることが少なくない」(同学部・金菱教授)なかで、視覚以外の感覚に注目して災害を読み解くことをめざしたという。

視覚障害者らに聞き取りをしたところ、それぞれが音の印象を始め当時の状況をはっきりと語り、視覚以外の感覚などで補いながら視覚的にとらえていたことがわかった。調査に協力した盲学校教員は「視覚障害があると、移動や情報の入手といったハードルがある。震災を語り継ぐなかで視覚障害者に関心を向けてもらえてよかった」と話す。

聴覚に注目したグループは、元消防隊員から聞こえるかどうかで救助の優先順位を決めざるを得ないといった葛藤や苦しみを感じながら活動したと聞き、その後もトラウマを抱えていると指摘した。

本のとりまとめ役を担った学生は神戸市出身で、子どものころから防災教育を受けてきたが、「五感に注目して被災者の話を聞き、震災をリアルに感じられるようになった」と振り返った。