強制不妊訴訟 高裁も棄却 札幌

2023/06/18

朝日新聞 2023年6月17日

旧優生保護法(旧法)の下、知的障害を理由に不妊と中絶の手術を強いられたとして、北海道内の女性(80)と夫(提訴後に死去)が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、札幌高裁は16日、一審判決と同じく、女性が旧法に基づき手術を受けたことを裏付ける客観的証拠はないと判断し、請求を棄却した。原告側は上告を検討する。

一,二審判決によると、女性は1986年、一泊入院し、中絶手術を受けた。その後妊娠することはなかった。当時日帰りが一般的な中絶手術だけでなく、不妊手術も受けていたと主張した。

高裁判決は、不妊手術を受けたことを裏付けるような検査結果や手術痕などの証拠が提出されていないと指摘。「不妊手術を受けたと認定するには足りないと言わざるを得ない」とした。中絶手術についても、親族の証言などから「女性の同意を得た上で実施されたことがうかがえる」と退けた。

佐久間健吉裁判長は、旧法の規定について「憲法違反との評価は免れない」とも指摘した。

全国弁護団共同代表の新里宏二弁護士は「国が救済を放置してきた責任を被害者に負わせ、厳密な証拠がないからと言って片付ける。それでいいのか」と疑問を呈した。