強制不妊 9歳の男女に 盲腸手術時 伏せて実施 国の報告書原案 全文判明

2023/06/18

朝日新聞 2023年6月15日

旧優生保護法(旧法、1948~96年)下で、障害や特定の疾患がある人たちが不妊手術を強いられたことをめぐり、立法経緯や被害事実などについての報告書原案の全文が判明した。9歳の児童に手術、法定手続を経なかった、など深刻な被害状況や法令逸脱の疑いのある運用が、国の報告書原案で裏付けられた。

旧厚生省は、手術にあたり、だますことが許されると通知。実際に「盲腸の手術時に本人にわからないうちにした」といった事例があった。

旧法で認められていたのは、卵管や精管を縛るなどの不妊手術。規定以外で生殖不能を目的にした手術は「故なく行ってはならない」と定められ、罰則もあった。だが子宮摘出などの法定外手術が横行。原案には「福祉施設長が生理を止める目的で手術(子宮摘出)を希望した事例があった」と記載されている。

本人の同意不要とされた手術には、都道府県審査会の決定などが必要だったが、審査を経ないで不妊手術が行われた可能性があるケースに言及。他にも、審査会の定足数を欠くなど、ずさんな運用が確認された。

専門家らは、報告書が今後に生かされるべきだと指摘しているが、原案に今回の調査を踏まえ国として旧法を検証した項目はなかった。