知的障害者向け母子手帳 大学教授ら作成、来年配布へ

2023/05/18

大阪日日新聞 2023年5月2日

障害者支援や看護学の大学教授らで作る研究班が、国の科学研究費で知的障害者にもわかりやすい母子健康手帳や育児支援冊子の作成を進めている。知的障害者の出産・子育てを巡っては昨年、北海道のグループホームで不妊手術や処置を受けていた問題が明らかになり、背景に支援の仕組みが整っていない現状があると指摘されている。研究班は母子手帳については来年、自治体の窓口などで通常の手帳と合わせて当事者に配布できるようにしたい考えだ。

研究班は、びわこ学院大の藤澤和子教授(特別支援教育)と、西南女学院大の杉浦絹子教授(看護学)の2人。通常の母子手帳は内容や項目を国が定めている。知的障害者には理解が難しい用語が多くあったため、平易な言葉に置き換えたり、イラストを添える考えだ。この「わかりやすい版」は副読本として使ってもらう想定。

2024年から希望する自治体に送るほか、インターネットでダウンロードできるようにする予定。母子保健や福祉の専門職を対象に活用方法も示す。

このほか、知的障害がある親向けに「母乳育児」「赤ちゃんの泣きと眠り」に関する冊子も作り、今年中の配布を目指す。

両教授は、2020年に当事者夫婦を対象に「赤ちゃんを産んだ後の避妊」に関する解説マンガを発行。知的障害がある妊産婦への対応をまとめた保険医療職向けのハンドブックも作成した。「知的障害やボーダーの人が妊娠、出産する例はあり、現場ではニーズがあるのに、対応が追いついていない。当事者が自らの意思で主体的に子どもを産み育てることを支援したい」と話す。