強制不妊 救済範囲を拡大 大阪高裁、除斥期間巡り

2023/03/24

朝日新聞 2023年3月24日

旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下で不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして、聴覚障害のある夫妻ら兵庫県の計5人が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が23日、大阪高裁であった。中垣内健治裁判長は、請求を棄却した一審判決を変更し、国に計4950万円の賠償を命じた。

不法行為から20年過ぎると賠償請求権が消える「除斥期間」の適用が焦点だが、高裁は①国が旧法を違憲と認める②旧法を違憲とする司法判断が最高裁で確定する――のいずれか早い時期から6ヵ月が過ぎるまでは除斥期間を適用しないとする初めての解釈を示し、救済範囲を広げる判断をした。

全国11の同種訴訟で、高裁判決は4件目。いずれも国に賠償を命じているが、除斥期間の適用を制限する期間については、「同種訴訟の提起を知ってから6ヵ月以内」「一時金支給法の請求期間の2024年まで」などと判断していた。大阪高裁は「(旧法は)極めて非人道的だ」とし、明らかに憲法違反だと指摘。国は旧法に基づいて差別や偏見を助長し、憲法上の権利侵害について被害者が認識することを積極的に妨げてきたのに、違憲性を認めていないとし「除斥期間を制限するのが相当」とした。

原告弁護団の藤原精吾弁護士は「全ての被害者を救済できる判断で、国に責任を認めるよう促す画期的な判決だ」と述べた。脳性まひを理由に手術を受けさせられた鈴木由美さん(67)は「体の傷は薄れても、心の傷は一生治らない。国は謝ってほしい」と話した。