障害者雇用 「代行ビジネス」が波紋

2023/03/08

朝日新聞 2023年2月27日

障害者の社会参加を進めるため、企業には一定割合の障害者を雇う義務がある。それを支援しようと、企業に障害者を紹介し、働く農園も準備する「代行ビジネス」が広がっている。収穫物は売らずに社内で配る場合も多く、「労働といえるのか」「雇用率を金で買うようなものだ」といった批判も出ている。

千葉県市川市の「わーくはぴねす農園市川」では、関東中心の企業23社に雇用された100人以上の障害者が働いている。企業の一つ、京葉ガスが契約した区画で働く、知的障害のある女性(45)は1年半前からここで働いている。それまでは「就労継続支援A型」の事業所で仕事をしていたが「ここの方がノルマがなくていい」と話す。京葉ガスでは、収穫した野菜を社員に配布している。農園を利用し始めたきっかけは5年前、「法定雇用率」が引き上げられたことだ。「社内の業務はガスの保安とも結びついており、任せられそうな障害者が見つからなかった」という。

障害者は原則週5日、1日6時間以上働く。企業は障害者に月13~14万円の給料を支払い、農園利用料を1区画あたり月30万円支払う。こうした働き方を歓迎する当事者も少なくない。

障害者支援団体からは批判の声が相次いでいる。障害者は契約企業から離れた農園で働くため、他の社員や顧客との交流が少なく、共生社会の実現という国の理念に反すると指摘。「全国手をつなぐ育成会連合会」は、企業が障害者雇用を丸ごと外注しているようにみえるとして、「雇用率をカネで買う」行為だとした。