障害のある人の一人暮らし ここから

2023/02/11

朝日新聞 2023年2月7日

新グループホーム構想先行現場を紹介。

東京都大田区のグループホーム「連携型大田」では軽度の知的障害がある人たちが暮らす。国に先立って東京都が設けた「通過型」と呼ばれるグループホームだ。3年ほどで単身生活に移れるように、金銭管理や住宅確保の支援などを実施する。ここには、連携する「大田通勤寮」で賃金の使い方や、掃除、洗濯などのサポートを受けてから移り住む。二つの施設を合わせて計約3年間過ごすという。

「連携型大田」で暮らす西脇明日香さん(40)は、「親亡き後」を見据え、「いつか一人暮らしをできるようにしたい」と入居。日中は介護施設の衣類を洗濯する仕事をしている。西脇さんは、すでに自律訓練施設でサポートを受けてきたため掃除や金銭管理は問題なくできる。しかし、一人になって時間や体調の管理ができるか不安があるという。退去後は、別のグループホームに移って経験を積むことを希望しているという。

この「連携型大田」は2019年の設立。これまで13人を送り出したが、いまも一人暮らしを続けているのは2人だけ。金銭的に厳しくなったり、仕事が続かなかったりする場合があり、再び別のグループホームで生活するようになることが多いという。

国内では現在、15万人を超す障害のある人たちがグループホームで暮らす。厚生労働省が2021年度に調査したところ、一人暮らしを希望するグループホーム入所者は約4割にのぼった。希望者が地域で暮らせるよう同省は障害者総合支援法を改正、新タイプのグループホームの新設を目指している。現行のグループホームでは食事の介助や日常生活上の支援を行いながら共同生活を営む。新タイプでは、従来のサポートに加え、希望者が一人暮らしに移行していけるように、買い物の同行や服薬管理、住宅確保といった支援にも取り組む。

ただ、こうした新たなグループホームを設置するだけでは地域で暮らせるに十分な支援体制とは言えないようだ。今回の改正法では、一人暮らしの定着のために、グループホーム退去後も「一定期間」はグループホームの事業者が相談支援などに対応するよう求めている。だが、「東京都手をつなぐ育成会」の朝熊貴史さんは「『一定期間』ではなく、特性に応じた継続的な支援が必要」、「一人暮らしを支援する体制整備を広げる必要がある」と話す。

新設されるグループホーム、その先の支援体制の充実が重要な課題だ。