知的障害者に不妊処置提示 北海道の施設 8組16人応じる

2022/12/20

朝日新聞 2022年12月20日

江差市の社会福祉法人「あすなろ福祉会」(1989年設立、福祉施設など約50ヵ所以上を運営、利用者は計410人)が運営する知的障害者施設で、利用する男女が結婚や同居を望んだ場合、パイプカット手術や避妊リング装着などの不妊手術を提示していたことがわかった。25年ほど前から同様の対応をとっていたという。

母体保護法では、妊娠または分娩が母体の生命に危険を及ぼす恐れのある場合などに限り、本人や配偶者の同意を得て不妊手術ができると定める。条件を満たさなければ、同意があっても認められないとしている。北海道は19日午後、本格的な調査に乗り出した。

19日に記者会見した樋口英俊理事長らによると、知的障害のある男女が結婚や同居を希望した場合、障害者カップルが子育てをすることの困難さなどを、保護者同席のもとで説明。その上で「子どもはほしくない」との意向であれば、男性にはパイプカット、女性には避妊リングなどの不妊処置法を紹介してきたという。1996年頃意向、8組16人が応じた。うち6組は現在、運営するグループホームで同居している。2組は結婚し、通所しながら就労支援を受けていたが、1組は退所したという。

同理事長は「障害者同士の自由なつき合いを尊重しつつ、現実にある様々な障壁を真摯に本人や家族に説明するのが我々の責務。その中で不妊処置を提案してきた。本人の意向に反して強制したことはない」と説明。不妊処置が施設利用の条件ではないとする一方、「障害者である親の面倒はみられるが、子どもが生まれてもサービスの対象外。きれい事では済まされない」とも語った。グループホームは原則18歳未満の子どもは入所できない。入所者の出産などを想定した制度が未整備になっている実態がある。

厚生労働省の担当者は、北海道を通じて事実関係を確認し、国として他の施設への調査の必要性も含め対応を検討するという。

立命館大学・松原要子教示(生命倫理)は、「優生思想が現在も根深いことが明るみに出た。子どもを持つ人生をあきらめるよう促すのは、かつてのハンセン病療養所にも通じる差別的な処遇と言えるのではないか」と話す。