「発達障害」の子8.8% 4割は支援受けず
朝日新聞 12月14日
全国の公立小中学校の通常学級に通う児童生徒の8.8%に、発達障害の可能性があることが13日、文部科学省の調査でわかった。このうち4割強は、授業中に配慮・支援を受けていなかった。
調査は10年ごとで、今は1~2月に行われた。約8万9千人を抽出し、学習障害(LD)、注意欠如・多動症(ADHD)、高機能自閉症に関する質問が当てはまるかを担任教員らが回答。この調査では、医師による診断は行われていない。
結果によると、「学習面または行動面で著しい困難を示す」とされた、発達障害の可能性がある小中学生は8.8%(男子12.1%、女子5.4%)だった。前回調査とは一部の質問内容が異なるため単純比較できないが、前回調査6.5%より増えた。今回から対象になった高校生は2.2%だった。座長を務めた宮崎英憲・全国特別支援教育推進連盟理事長は、割合が増えたことについて「教員や保護者の理解が進み、以前は見過ごされてきた困難のある子どもたちに目を向けるようになったことがひとつの理由」と解説。
8.8%の児童生徒のうち、教員が丁寧に指導できる支援・配慮を受けていたのは54.9%、受けていなかったのは43.2%。通常学級に在籍しつつ、一部は別室で学ぶ「通級指導」を受けているのは10.6%。校内委員会で支援が必要とされ、学校として支援していくことが決まっていたのは28.7%。いずれも前回よりは割合が上がって(「受けていなかった」では下がって)いたが、支援は途上にある。
保護者からは、それぞれの特性に応じた支援を求める声が上がる。だが、特性は様々な上、専門知識がある教員ばかりではない。
ある生徒は、文字の読み書きが苦手。小学校の通級指導で指導を受けたが、担当教員は読み書きが苦手な子についての専門知識が少なかった。何度も学校に求め、授業やテストなどでの端末使用などを認めてもらった。だが、公立中では端末は1人1台配布されていたが、定期試験での配慮はしてもらえないとわかった。入学した私立中では、端末やデジタル教科書などをフル活用して学ぶことができ、定期試験でも配慮を受けることができた。母親は「なぜ公立中ではできないのか疑問です」という。
都内公立小の養護教諭は「行動面でおとなしければ、学習面で苦手なことがあっても、校内で認識されず、放置される例が多い」と指摘する。教諭の勤務校では、保健室登校をしている児童の半数程度はLDの傾向があるという。「支援するには、教員の専門性も人数も圧倒的に足りない。教員の育成も含めて根本的な改革が必要」と話す。上野一彦・東京学芸大名誉教授(臨床発達心理学)は「通常学級に発達障害の傾向がある児童生徒が一定数いるとの認識が広がり、制度は次第に整ってきている」という。ただ、教員の専門性が不足している場合もあり、特性にあった効果的な支援がされず、LDの子にもADHDや自閉症スペクトラム症の傾向がある子と同じような対応をしている例も少なくないといい、「特性に応じた指導、支援の態勢を強化することが必要だ」と指摘する。