強制不妊 再び「違憲」 大阪地裁 損害賠償は認めず

2022/09/23

朝日新聞 2022年9月23日

旧優生保護法の下で不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして、聴覚障害がある大阪府の夫婦が国に計2200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は22日、原告の請求を棄却した。横田典子裁判長は旧法を違憲とし、手術から20年で賠償請求権が消える「除斥期間」の適用も一時的に制限されると認めたが、夫妻はその制限期間を過ぎてから提訴したとし、訴えを退けた。

原告の妻は1974年、医師らの説明がないまま不妊手術を受けた。判決は旧法を「特定の障害や疾患を有する者を一律に不良と評価し、子孫の出生を制限しようとした。非人道的かつ差別的だ」と批判し、自己決定権を保障した憲法13条や法の下の平等を定めた14条に違反し、国に国家賠償の責任があると認定した。その上で、原告に除斥期間が適用されるかを検討。2月の大阪高裁判決と同じく、原告らが社会的な差別や偏見の下、相談機会や情報へのアクセスが難しく、同種訴訟の提起を知ってから6ヵ月以内に提訴していれば、損害賠償を求める権利は消えないと認めた。しかし、原告が提訴したのは2019年12月で、6ヵ月間を過ぎていたとし、損害賠償を求める権利は消滅していたと結論づけた。

同種訴訟は全国9地裁・支部で起こされ、判決は控訴審を含めると9件目。旧法を違憲としたのは7件目。2~3月の大阪地裁、東京地裁に続き、除斥期間を制限する判断となった。

国側は「主張が認められた。手術を受けた方に対しては、着実な一時金の支給に取り組んでいく」とのコメントを出した。

判決後の記者会見で、妻は「この痛みを忘れることはできない。裁判長にわかってほしかった」と手話で訴えた。代理人弁護団も控訴の意向を示した。弁護団によると、夫妻の提訴には長期間の準備が必要だった。記録が残っておらず、手術痕を診てもらい診断書をとろうとしたが、10ヵ所以上に断られた。手話通訳者が欠かせず、コミュニケーションを図るのに苦労したという。弁護団の辻川圭乃弁護士は「憲法に反する政策を進めた国を、6ヵ月間提訴できなかっただけで免責することが本当に正義・公正にかなうのか」と批判した。