脳性まひ、目標は大学講師 「意思伝えたい」 共感呼ぶチャレンジする姿、YouTubeに

2022/08/02

朝日新聞 2022年7月25日

脳性まひの畠山亮夏さん(23)は、体が不自由で声もうまく出せないが、「伝えられる大学講師に、オレはなる!」という目標に向かっている。チャレンジする姿をYouTubeで発信して共感を読んでいる。

亮夏さんは生後9ヵ月で脳性まひと診断された。筋肉の緊張や不随意運動がある。声帯の筋肉も緊張するので発声しづらい。意思を伝えるときは、母の織恵さん(42)が口元を読み取っている。

これまで、大阪健康福祉短期大学などで講師として働いてきた。服の着脱を練習してもらったり、障害者として抱える問題の解決法を探るロールプレイの相手になったり。脳性まひの自分だからできる仕事で、やりがいを感じていた。だが、学生とのコミュニケーションには、母や教員の手助けが必要だった。「伝えたいことの1割だけ」しか伝えられない。そこで、1人で教壇に立とうと、一大決心をする。不随意運動を抑えるための手術を受けることに決めた。腹部に緊張を和らげる薬剤を入れたポンプを埋め込み、持続的に脊髄に送り込めるようにする手術だ。

自分の意思が伝わらないもどかしさを多々感じてきた。目の動きや特殊な機器を使う方法を試してきたが、不随意運動が激しく、うまくいかなかった。手術で緊張が和らげば、支援機器を使って伝えられるようになる可能性があると考えた。昨年10月、自身のYouTubeチャンネル「イキプロ2/0」に意気込みを語った動画をアップした。

手術は無事に成功。今後、薬の量を調整しながら、様々な支援機器を試していくという。生体の緊張が和らいだことで、音声が出やすくなった。「伝えられる大学講師」の目標に近づけたと考えている。課題は語彙力や会話のキャッチボール。これまでは単語を織恵さんに読み取ってもらっていたため、言い回しなどが苦手なので、勉強に意欲的に取り組みたいという。

YouTubeでは、言語聴覚士や理学療法士と現状の課題を探る様子や、支援機器を使う訓練の様子などを月1~2本のペースでアップしている。「挑戦する姿を見て『自分もできる』と感じてほしい」

4月から、府内の学校で週に1度講師を務めている。まだ100%伝えられているわけではないが、手応えを感じている。「生き方がかっこいい先生になりたい」。夢が膨らんでいる。