障害ある学生の就活 支援の輪

2022/07/07

朝日新聞 2022年6月20日

6月から就活シーズンが本格化し、障害がある学生たちも活動に力を入れている。ただ、一般枠での就活にくらべ、情報が乏しく、苦労も少なくない。入社してもミスマッチで早々に退職する例もあり、企業や大学が支援の輪を広げている。

精神障害者保健福祉手帳1級を持つ、私立大学4年の女性は「最初はどうしたらよいか全然分からなかった」と話す。当初は一般枠で説明会やインターンに参加していたが、定期的通院や時差出勤が必要なので、障害者枠に切り替えた。そこで壁になったのが情報の少なさだった。どんな配慮があるのか、どんな仕事を任されるのか、情報や説明会は乏しかった。「孤独で不安だった」と振り返る。

そんな中、障害がある学生の就労支援を行う「エンカレッジ」(大阪市)を知った。同社は、2020年3月から「家でも就活オンライン」というサービスを展開。エントリーシートの添削や面接の練習などを無料で行っている。障害者雇用に特化した「オンライン企業説明会」に力を入れている。月数回行われ、1日数社ずつ企業がZoomに登場する。エンカレッジの窪貴志社長は「障害者雇用の説明会は少ない上、出かけられない学生も多い。企業研究が非常に難しい」と指摘する。実情を知らぬまま入社し、すぐ退職する例は一般より多いといい、「説明会を活用し、障害への配慮などを会社ごとに比較するのが重要だ」と話す。

日本学生支援機構によると、障害がある大学生は2006年度に約4400人(全学生の0.16%)だったが、2020年度には約3万1千人(同1.04%)にに増えた。発達障害が広く知られるようになったほか、2016年にに施行された障害者差別解消法で、各大学の受け入れ態制が整ったためだという。「進路・就職指導をしている」と答えた大学は、2008年度は62校だったが、2020年度には288校になった。

障害者雇用に詳しい大妻女子大の小川浩教授(障害者福祉)は「障害がある学生がミスマッチなく働くには、自身の適性と必要な配慮を早期に把握することが大切。インターンなどは非常に重要だ」と話す。昨年3月に障害者の法定雇用率が引き上げられたことにも触れ、「今後も障害者雇用の需要は増えていくが、大学と企業の連携は一部にとどまっている。社会全体での取り組みがいっそう求められている」と指摘した。