郵便投票、「要介護4や3も」 「病気やけがで投票行けず」声相次ぐ

2022/07/04

朝日新聞 2022年6月15日

要介護5の人に認められている郵便投票を、要介護4や3の人にも広げてほしいという声が相次いでいる。寝たきりでなくても、投票所まで行くのが困難な人が多いからだ。総務省も2017年、郵便投票できるようにすべきだとする報告書をまとめたが、法案提出が具体化する動きは見えない。

ある選挙管理委員会の職員は、選挙が近づくたび「投票所に行けないが何とか投票できないか」といった電話を受ける。有権者が都道府県の選管が指定する老人ホームなどに入所していれば、施設内で不在者投票できる。要介護5なら、郵便投票も可能だ。しかし、これらに当てはまらない場合が多い。投票の方法や条件は公職選挙法で決められており、要介護4や3だと投票所まで行くしかない。

宝塚市の女性(72)はパーキンソン病で要介護3だ。3年前から車いすで生活しており、自力での外出は難しい。夫も杖が必要で、車イスを押していくことはできない。政府は昨年、新型コロナウイルスで自宅療養している人らを対象に、郵便投票を特例法で認めた。夫は、新型コロナで迅速に認められた一方、要介護4や3への拡大が進まないことにもやもやを感じている。

総務省によると、2015年度に認定を受けた要介護4の人の96%、3の80%が寝たきりや寝たきりに近かった。投票環境の向上を議論してきた検討会は2017年、「今後さらに高齢者が増加し、在宅介護を受ける者も増加が見込まれる」として、郵便投票できるようにすべきだとする報告書をまとめた。全国市区選挙管理委員会連合会も2018年から毎年、要介護4と3への拡大を求める要望書を国会に提出している。検討会の委員だった淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は、5年経っても具体化していない状況を、「国会議員も官僚も、やる気がないと言わざるを得ない。投票権は、国が保障すべき有権者の権利。電子投票など他の方法も含めて投票機会を保障すべきだ」と話した。