髪につけるだけ 音を「体感」 聞こえない人も味わう一体感

2022/06/02

朝日新聞 2022年5月31日

全国発明表彰 「恩賜発明賞」

音を振動・光で知覚する身体装着装置の意匠「Ontenna(オンテナ)」 本多達也(富士通)、高見逸平(元富士通デザイン)、千崎雄大(アルテクナ)

髪や服などに取り付けると、聞こえない人も音を振動で体感できる機械。全国の約8割のろう学校で使われ、「子どもたちが声を出すようになった」など喜びの声が上がる。

長さ65ミリで髪や耳たぶ、服のえりなどに取り付ける。内蔵マイクが60~90デシベルの音を拾い、瞬時に256段階の振動と光の強さに変換する。コントローラーを使えば、複数のオンテナを制御でき、健聴者と聴障害者が同じ感覚を共有できる。

プロジェクトリーダーの本多さんは、大学1年時の文化祭で聴覚障害のある人と出会った。「聞こえない人に音を伝えたい」と開発に取りかかった。ろう者に何度も意見を聞き、触覚=振動に目をつけた。様々なパターンを試し、ヘアピンのように髪につける形にたどり着いた。試作品を全国のろう学校に1ヵ月間使ってもらい、課題も浮かび上がった。忙しい教員からは、生徒のオンテナひとつひとつの充電が大変という声が上がり、置くだけで充電できる装置を作った。

2019年に一般発売を始めた。耳の聞こえない妊婦が、おなかの赤ちゃんの心音をオンテナで感じる動画を投稿した。

世界で聴覚障害を持つ人は約4億人以上と言われている。本多さんらは「オンテナは言語の壁がない機械。世界中に届けたい」と意気込む。