ハンドサインでオールOK 聴覚に障害のある高校生 初のボート大会

2022/05/21

朝日新聞 2022年5月19日

ボート競技は、音声がないとオール操作や水面の障害物への注意喚起も難しいとされる。パラリンピックでは2018年北京大会から、ボート競技が正式競技になった。しかしパラリンピックは、聴覚に障害のある人はどの競技にも出場資格がない。聴覚に障害がある人の国際スポーツ大会「デフリンピック」にボート競技はない。

22日、琵琶湖で大津市民レガッタがあり、滋賀県立朗話学校高等部(13人、栗東市)から生徒4人が出場する。日本ボート協会によると、聴覚に障害がある人が大会に公式参加するのは、例がないという。きっかけは昨夏、ボートを製造・販売する桑野造船(大津市)の役員・今村拓也さん(54)が学校を訪れ、仕事について話したことだった。今村さんは約5年前から障害がある人のコーチを務める。「障害の種類にかかわらずボート競技の一体感を経験してほしい」と呼びかけた。生徒たちは昨秋から製造工場を見たり、パラリンピック出場経験者・西岡利拡選手の講演を聞いたりして学んできた。今村さんからも競技に必要な指示を受け、「こぎ出す」「ストップ」「前を見る」など9つのハンドサインを考えた。琵琶湖での初めての練習では生徒たちから「心に残った」「僕たちにもやれた」などの声が上がった。学校は大会に参加することを決めた。

22日は、生徒4人と西岡選手ら2人がこぎ手、桑野造船社長の小澤哲史さん(64)が舵手を務める。教諭が舵手のすぐ後でハンドサインを送る。大会に参加する伊藤潤さん(3年)は「勝つのが目標だが、みんなで楽しんで参加したい。聴覚障害だからできないだろう、とあきらめかけている人がいたら挑戦してほしい」と話す。