障害女性の困難変わらず 「複合差別」報告から10年

2022/05/07

大阪日日新聞 2022年4月24日

女性、障害者という二つの理由で困難を強いられる「複合差別」。声を上げにくい被害を可視化しようと、体験談を集めた報告書が10年前に作成された。この間、障害やジェンダーへの意識は高まってきたが「状況はあまり変わっていない」と、調査した団体「DPI女性障害者ネットワーク」は改善を求めて発信を続けている。

「聴覚障害のために痴漢に遭ったとき助けを呼べなかった」、「障害女性は経済的自立を前提とした自己実現が難しい」、「世の中の『女性らしさ』はわたしにはできない」、アンケートに寄せられた87人、227件の声は切実だった。働く意欲や機会の否定、家事や育児など性別役割意識にまつわる偏見、入浴や生理の男性による介助といった性を無視される扱いなど、多岐にわたる。3割超は障害の弱みにつけ込まれた性暴力被害を打ち明けた。

同団体代表・藤原久美子さん(58)は「今読んでも改善にはほど遠い。根本的な差別意識が残っていると感じます」と話す。報告書の反響は大きく、藤原さん自身も「障害女性だから仕方がないとあきらめていることが、実は差別だ」と気付くきっかけになった。しかし、期待した社会の変化にはつながらなかった。「障害、就労、地域生活、教育などあらゆる分野に女性やジェンダーの視点は横断的に必要なのに、他に優先すべき問題があると二の次にされてきた」と指摘する。

調査に携わった同団体の米津知子さん(73)は改善に向け障害や性差の壁を越えた連携を呼びかける。性暴力を告発する「#MeToo」運動、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長だった森喜朗氏の女性蔑視発言への抗議など、社会の動きに「障害がある女性も触発され、共に行動できたら」と期待を寄せる。女性運動に長年携わる中、女性差別と組み合わせのように存在する「男性が縛られる男性らしさ」にも注目してきた。「コロナ下で多くの人が生きづらさに直面する今、男性も男らしさによるつらさを恥と思わず解放できたら、性差を超えて助け合っていけるのではないでしょうか」。「障害のある人とない人が出会う機会が少ない社会で戸惑いも多いと思うが、互いが一緒に何をしようかと考えてみてほしい。相手の存在を見て向き合える関係を築いていけたら」と話す。