
強制不妊広く救済 明石市の問いかけ
朝日新聞 2022年2月21日
旧優生保護法(1948~96年)で障害などを理由に不妊手術などを強いられた市民を支援する条例を、兵庫県明石市が昨年12月に施行した。国の一時金支給法より対象範囲が広く、専門家も注目する。
明石市の「旧優生保護法被害者等の尊厳回復および支援に関する条例」は、国が対象とする不妊手術だけでなく、中絶手術を受けた市民やその配偶者にもそれぞれ支援金300万円を支給する。国の認定を受けた市民も申請でき、より多くの被害者を救済しようとの考えから期限はない。
同市の小林宝二さん(90)と喜美子さん(89)夫妻は耳が聞こえず、喜美子さんが27歳の時中絶手術と不妊手術を受けさせられたという。「赤ちゃん、くさってる」と手術を受けさせられた。中絶手術だけと思い、その後なぜ子どもができないのかわからなかった。2018年、支援団体の調査がきっかけで、初めて知った。2018年9月、憲法が保障する基本的人権を侵害されたとして神戸地裁に提訴。違憲性は認められたが、賠償請求は棄却され、控訴した。「60年あまり、子どもがいない寂しさや悔しさ、差別に苦しんできた。条例で配偶者も被害者だと認められてうれしい。何より、障害のある人もない人も一緒に生きて行こうと言うことが伝わってくる」と手話で語り、条例制定に喜びをかみしめている。「全国には多くの被害者がいる。他の自治体でも同じような条例を作り、差別されないまちが全国に広がれば、国の法律や裁判にもいい影響を与えるかもしれない。条例を多くの人に知ってもらえるよう活動していく」と話す。
国は2019年4月、旧優生保護法下で不妊手術を受けた人に320万円を支給する一時金支給法を施行。請求期限は法施行から5年だ。厚生労働省の調べで約2万5千人の該当者があるが、認定数は法施行後累計で966人(2022年1月末時点)だ。
泉房穂明石市長は、「命に優劣をつける理不尽な優生思想で人生をあきらめなければいけなかった人たちにとって、国の支給法は不十分だ。被害者が高齢になり、時間が限られる中で目の前の被害者の救済は急務」と制定の思いを語る。力を入れたのは、ともに生きる理念や障害者の尊厳を盛り込むことだったという。前文に「だれひとり取り残さない共生のまちづくり」を掲げ、障害者の尊厳を傷つける事態を繰り返さぬよう優生思想と向き合う決意を記し、支援する市民の役割も条文で明記した。今後、他の自治体に同様の条例作りを働きかけ、一時金支給法の改正を厚労省・国会議員などにも要望していくという。





