障害者向け水害ハザードマップ 作成済み市区町村2.6%

2022/01/29

大阪日日新聞 2022年1月28日

障害者向けの水害ハザードマップ作成について国土交通省が昨年6,7月に調査した。すでに作成されているのは応じた1591自治体のうち大阪など16都道府県の41市区町村にとどまることがわかった。「作成中・検討中」も53市町村(3.3%)で、多くの自治体では検討も始まっていなかった。豪雨災害が激甚化する中、災害弱者への対応が遅れている実態が浮かんだ。

国交省はマップ作成の手引きに先行地域の事例を盛り込むなどして後押しする。昨年12月に有識者会議を設け、具体策の検討を進めている。課題として主に挙がったのは「作成方法」と「財政支援」だ。「ハザードマップの情報量が多く、どの情報を障害者に提供すればよいかわからない」との声もあった。

「作成済み」「作成中・検討中」の94市区町村が採用する提供方法は、音声が最多で、次いで点字。手話の動画を活用したり、知的障害がある人などのためにわかりやすい日本語を使った例もあった。京都府福知山市は、ハザードマップ上の情報を読み上げる音声ファイルをホームページで公開している。新潟県長岡市は地区ごとの浸水の深さなどを点字で表記。北海道石狩市はスマートフォンで読み込む2次元コードをマップに載せ、簡単な操作で手話動画を見られるようにしている。作成にあたって協力を求めた相手は、「なし」が41,「NPO法人・ボランティア団体」が29,「行政機関」が21などだった。

障害者団体からは「対策に当事者の視点を取り入れてほしい」との声があがるが、作成済みの自治体でも、障害者団体と連携して取り組んだケースは多くない。日本視覚障害者団体連合の及川清隆副会長(69)は「障害者に対応したマップを作っていない理由を自治体自ら問うことから始めるべきだ」「行政側の関心の低さが露呈した、残念だ」と訴える。

長野市の点訳ボランティア片山孝子さん(68)は2019年12月、目の不自由な知人の依頼で避難所まで約1.5キロの道のりを点図にした。細かな地形を伝えるのに苦心したといい、「触れてもらいながら説明を加えることでようやく理解してもらえた」と振り返る。

点字案内板の制作で実績がある企業の担当者は、「点図にする範囲を狭めたり、情報量を絞り込むなど、かなりの工夫が必要だ」と指摘する。