障害福祉 人権と表裏一体  低い待遇=障害者を尊重しない社会

2022/01/15

朝日新聞 2022年1月14日

岸田政権は介護や保育、看護、障害福祉の分野で働く人たちの賃金を3%程度引き上げる方針だが、障害のある人たちを支援する現場の待遇は改善されるのだろうか。社会福祉法人「鴻沼福祉会」常務理事の斎藤なを子さんに聞いた。

障害福祉分野の職員の賃金を2月から3%程度(月額9千円)引き上げることについて~~あまりに小ぶりな上げ幅で、構造的な待遇の低さを抜本的に変える起爆剤になるとは思えない。

政府によると、障害福祉人材の賃金は月29万5千円で、全産業平均は35万2千円~~現実とかけ離れている。手当や残業代も含まれているのに、数字が一人歩きしないか心配だ。障害分野では新卒初任給の手取りは20万円に達しない人が多いのが実情。将来設計の見通しが立たず、特に5年以内の離職率が高い。人手不足の悪循環が続いている。少なくとも、全産業の平均なみにすべきだ。

賃金を上げ、人材不足を解消するために、政府に求めることは~~基本報酬の引き上げと報酬制度の見直しだ。サービスの利用実績に応じて国などが事業者に支払う報酬を「日払い」方式ではなく月払いにすること、非常勤職員を雇うことを前提とした常勤換算方式をやめること、一部残っている利用者の応益負担を撤廃することだ。今の仕組みでは安定した職員の雇用は維持できない。

そもそも待遇が低いのはなぜか~~障害福祉職員の労働条件の問題は、障害のある人の人権の水準とコインの裏表だ。担い手が劣悪な状況に置かれているのは、障害のある人の人権はこの程度でいいということ。それが一番の問題だ。今のような待遇で良しとしてきたのは政治や行政の責任だ。