障害者のテレワーク 広がる選択肢

2022/01/15

朝日新聞 2022年1月10日

コロナ禍をきっかけに障害者のテレワークに注目が集まっている。地方に住み続けながら大都市の企業に勤めやすいなどの利点がある一方、課題も浮き彫りになっている。

障害者雇用の状況は、大都市では障害がある働き手の「売り手市場」の傾向があるのに対し、多くの地方ではそうではない。厚生労働省によると、2016年度の障害者雇用の充足率(新規求人に対する就職率の割合)は。東京都では3割未満、愛知県や大阪府なども4割未満だったのに対し、岩手県では7割超。

地方の障害者が地元で働こうとすると、職探しのハードルが高いが、テレワーク普及によって地域格差が縮まる可能性がある。法定雇用率達成のために、ある企業は採用面接をオンラインに切り替え、障害者を地方でも採り始めた。テレワークに伴う勤怠管理の難しさは「障害の有無とは関係ない」という。地方採用枠を広げ、「多様な働き手が集まってくれている」と話す企業もある。

テレワークが万能な訳ではない。発達障害のある人を対象に就労支援をしている企業の担当者は、「在宅勤務は、口答での指示を理解したり、場の空気を読んだりすることが苦手な人にはメリットが大きい」と指摘。その上で、「在宅勤務を導入しづらい工場や倉庫などの軽作業の求人はコロナ下で一時減った」と話す。障害者の雇用支援を手がける企業は昨年夏、障害者約470人に働き方の希望をアンケート調査した。その結果、35%の人は「在宅勤務とオフィスへの出社の併用」を望み、「在宅勤務」の3倍以上だった。担当者は「在宅勤務の広がりを追い風に、障害者の地方採用が増えている」が、「聴覚障害のある人がマスクをつけた人の口元が見えずコミュニケーションが難しくなったり、障害特性によってパソコンでの指示を十分のみ込めず、業務の習得や理解が追いつかなかったりという例もある」と指摘。「テレワークと出社のバランスを含め、障害特性に合わせた対応が必要」と話す。

情報格差解消に取り組む、聴覚障害のある伊藤芳浩さん(51)は以下のように話す。「在宅勤務では筆談もできず、気軽に質問できなくなった」、「テレワークで、プラスとマイナスの両面があった」。また、「コロナ下で仕事が思うように進まず、解雇されるのでは、と強い不安を抱える人も増えている」、「在宅勤務がニューノーマルとなったことをきっかけに、障害者同士で課題を話し合うようになった」、「オンライン会議が増えたが、読み上げ機能を備えていないため視覚障害者が困ったり、字幕がなく聴覚障害者が活用できない、といった障害者への配慮が足りていないことが共通した課題が見えた。まとめて会社に伝え、改善んが進んだ。課題を伝え、会社側と知恵を出し合うことが重要だと実感した」