「あったらいいな」を商品化 発達障害者の声 ノートに

2022/01/12

大阪日日新聞 2021年12月23日

大栗紙工(大阪市)は1930年の創業以来一貫して紙製品を製造。主にノートを年間2千万冊以上製造しているが、昨年初めて自社製品「mahora(まほら)」を発売した。視覚過敏などの特性がある発達障害当事者の「あったらいいな」の声から生まれたノートは、府知事認定の大阪製ブランドのベストプロダクト選出をはじめ、高い評価を受けている。

「他人任せではなく、自社でコントロールできる商品が欲しかった」と3代目の大栗康英社長(66)。広報業務のセミナーがきっかけで、発達障害の当事者団体とつながりができ、約100人から聞き取りを行った。「紙の反射がまぶしい」「書いているうちに行が変わってしまう」「けい線以外の情報が気になって集中できない」など、寄せられた声は考えたことがないことで、「ノートで困っている人がいるなんて知らなかった」と大栗社長。紙の質や色、けい線の濃淡や幅を変えて試作を重ね、当事者に選んでもらった「レモン(黄)」と「ラベンダー(紫)」の2種類を2020年2月に販売開始した。

見過ごされてきたノートの困り事に光を当てた商品はメディアで紹介され、グッドデザイン賞や日本文具大賞デザイン部門優秀賞を獲得。当事者の「あったらいいな」は多くの人の共感を呼び、11月末までに累計約6万5千冊を売り上げた。他業種との協業も始まり、新商品も発売される。「これまでは大量生産しかなかった。他者の力を借り、相談しながら価値を認めてもらえる仕事をしていきたい」と大栗社長。