吃音、母の死…音楽の力で前へ 市民劇団が創作ミュージカル 高松

2021/12/21

毎日新聞 2021年12月20日

 音楽の力がテーマのミュージカル「響け♪駅ピアノ」を劇団プチミュージカルが26日、レクザムホール(高松市玉藻町)で公演する。吃音、母の死といった挫折を経験した子どもや大人が前に踏み出していく物語だ。

 劇団プチミュージカルは1984年に結成された。劇団員は、児童から90代まで幅広く、香川県東部を中心に約70人。毎年創作ミュージカルを公演している。

 今回は、山間の町に山村留学にやってきた男女2人の児童の物語だ。男児には吃音があり、女児は母の死を引きずっている。一緒の列車でやってきた、右手がきかなくなったピアニストが駅舎に置かれたほこりをかぶったピアノを見つける――。

 劇には、男児が音読でどもり、同級生にからかわれる場面がある。担任の適切な指導のもと笑顔で言葉を出したり、事故の際必死で危険を伝えたりするなど、吃音の現実がリアルに描かれていた。脚本を手がけたのは元音楽教師の劇団員、白川恵介さん(63)。吃音を取り入れた理由を聞くと、「音楽は人に何ができるのか。調べていくと、吃音はリズムに乗ればどもらないことを知りました」と説明してくれた。男児を演じる、さぬき市立さぬき北小6年の山本大志さん(11)には吃音はないが、動画などで症状を学んだ。演じてみて「しゃべるのが制限されることは、思っていたより大変だ」と体感したという。劇中何度も披露される「音楽の力信じよう!」は、白川さんが教え子や同僚へのメッセージを込めて作詞作曲した。

 冒頭のシーンは山村の、急勾配をジグザグに登っていく線路・スイッチバックのある駅だ。白川さんは「人生はスイッチバックのようなもの。まっすぐでなくても一歩一歩進めば、頂上が見えてくるはずです」と話す。記者には、この劇が人生の応援歌に思えてきた。