ひと 障害者の「思い」を伝える制度作りの先頭に立つ弁護士 辻川 圭乃 さん(63)

2021/12/19

朝日新聞2021年12月15日

自分の考えをうまく言葉にするのが難しく、他人の話に合わせがち―、そんな傾向に早く気づき、障害がある可能性を踏まえて対応すれば、冤罪や再犯を防ぐための福祉支援につなげられる、そう信じて刑事弁護を続けてきた。

17年前、知的障害がある被告を弁護した。じっくり向き合い話を聞くと、知人の借金のために名義貸しをさせられ、言われるがままに窃盗をしていたとわかった。療育手帳の取得を勧め、福祉のサポートを受けつつ更生する道を開いた。「被害の延長線上に加害者がいる」ことの可能性を学び、裁判後を見据えた「切れ目のない支援」が必要だと感じた。

大阪市職員として障害者支援の基幹施設の設立に立ち会った。5年で退職し弁護士に。2006年、全国で初めて知的障害者刑事弁護マニュアルを作った。障害者専門の弁護士派遣制度や障害者福祉と連携する仕組みの創設にも関わり、現在は日本弁護士連合会で障害者の刑事弁護に関する連絡会の座長を務める。

旧優生保護法をめぐる民事訴訟でも、原告代理人として思いを訴える先頭に。「障害がある人の人生に寄り添い、社会に残る優生思想をなくしたい」