字幕付きCM全国放送 切実な声受け環境整備

2021/12/07

大阪日日新聞 2021年11月20日

今年10月から全国の民放テレビ局で字幕付きCMが放送できるようになった。今年9月時点のCMへの字幕付与率はわずか1.05%(推計値)。関係者は普及と認知度アップに力を入れる。

10代で両耳を失聴し、字幕付きCMの必要性を訴える国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)の松森果林理事は「CMはあらゆる工夫を盛り込んだ最強の宣伝メディアなのに、聴覚障害者に内容や魅力が伝わらないのはもったいないし疎外感がある」と語る。2006年からIAUDでプロジェクトを始動し企業や総務省にも働きかけた。「CMにも字幕という発想が誰にもなかった。音の無いCMを見てもらうなど、丁寧に説明する中で理解が広がりました」

今やほとんどの番組で字幕表示が可能だが、CMでは多くの課題があった。広告主や広告会社、テレビ局の各業界団体は2014年、字幕付きCM普及推進協議会を設立。字幕付きCMの制作・搬入の手引きやルール、「万が一、前のCMの字幕が次のCMにかぶってしまっても事故と見なさず賠償を求めない」といった合意をまとめた。

テレビ局では字幕付きCMを放送するための設備や、目視や機械で内容をチェックする体制を整備。今年10月全国の民放99局とBS民放5局で一部のCM枠に字幕をつけられる環境が整い、来年10月には全面的に字幕付きCMを受け入れられるよう準備を進める。

総務省の調べでは、2015年の日本の難聴自覚者率は33,6%。高齢化に伴い、今後上昇すると予想される。松森理事は「字幕や手話など言語マイノリティーを取り残さない取り組みが当たり前の社会になってほしい」と語る。一方、録画機器の発達や動画配信の浸透でCMを見る人は減っており、字幕によってCMに触れる人が増えれば企業のイメージアップや市場拡大につながる可能性がある。音を出しにくい環境でもCM内容を把握できるなど、健聴者にもメリットはある。協議会は認知度アップのため訴求CM「それいけ!字まくクン」を制作、全国の民放局で放送中だ。