ひと 発達障害の「当事者演劇」づくりに取り組む 関根淳子さん(43)

2021/11/19

朝日新聞 2021年11月19日

 発達障害の女性を主人公にした一人芝居「わたし」の公演を続けている。アスペルガー症候群の当事者として、独特の世界観に観客を引き込む。

 幼い頃から集団行動が苦手だった。「人間関係と関係ない世界で生きたい」と宇宙物理学者を目指したが、生活のペースを作れず、下宿に引きこもった。演劇が「社会との唯一のつながり」だった。劇団のオーディションを受け、俳優に。静岡県舞台芸術センターに所属。劇団「音乃屋」を主催するようになった。

 2008年、孤立した育児が虐待に向かう心理を表現した創作劇「鬼子母の愛」で子育て中の女性の共感を集め、「当事者演劇」の力に気付いた。2年前、発達障害がある増田雄さんの一人芝居「私」を見て「女性版を作ろう」と決意。ほかの当事者にも取材して脚本を書いた。昨年オンラインで初演、今年は舞台で上演が続く。「演劇は生きづらさを解決しないけれど、弱いままの自分を大切にしたいね、と伝えることはできる」。芝居を呼び水に語られる人生に耳を傾ける。