元気にキレイに 補聴器  マスクで気づく聞きづらさ

2021/11/16

朝日新聞Be 2021年11月6日

 新型コロナウイルス感染症の流行に伴うマスク生活で、聞きづらさを感じる中高年が増えているという。

 シャープは9月、ワイヤレスイヤホンのようなデザインの補聴器の販売を始めた。軽度~中等度の難聴で、見た目に抵抗感のある40~60代の現役世代を意識して開発したという。聴力に合わせた調整が、自宅からスマートフォンでできるのも特徴。研修を受けた補聴器技能士や言語聴覚士が対応する。同社がこの8月に実施した調査で「日常生活で聞こえづらさを感じる」人は23.4%と、新型コロナ流行前の1.6倍。年代別では50代でも21.0%だった。

 「マスクモード」のついた補聴器もある。シバントス社が昨年8月に販売を始めた。同社によると、日常会話の周波数は250~4千ヘルツで、マスクを着けて話すと2千ヘルツより高い音が吸収され、こもった音になり聞きづらくなる。マスクモードはスマートフォンのアプリで操作し、吸収される高めの音をより聞こえやすい音質に調整するという。

 北里大学医療衛生学部の佐野肇教授(聴覚療法学)によると、中高年の聞きづらさは主に「加齢性難聴」だ。鼓膜の奥の蝸牛内にある、音を感じる有毛細胞が長年音にさらされ、徐々に脱落して生じる。高い音を感じる細胞から減り、再生しない。

 軽度・中等度難聴向けの補聴器は主に、耳あな型と耳かけ型がある。城北補聴器大山店の店長で補聴器技能士の野田善敬さんによると、耳あな型ではワイヤレスイヤホンのようなデザインが増え、耳かけ型はカラフルで大きさも目立たないタイプが増えているという。「会わない」と相談に来る人も多いそうで、技能士がいる店で相談・調整した方がより合った補聴器を見つけやすいとのこと。

 「買う前にまず耳鼻科を受診して」と佐野さん。中耳炎など治療可能な難聴もある。どんな音が聞こえにくくなっているかなど記入した診療情報提供書は補聴器の調整に役立つ。「毎日長く着ければ、補聴器を通した音に脳が2週間ほどで慣れるので、使い続けてほしい」、また加齢性難聴の悪化を抑制するには生活習慣病の予防も大切で「年に1回は耳鼻科へ」と話す。国税庁によると、日本耳鼻咽喉科学会の補聴器相談医が診断し、認定技能者がいる店で購入すれば、医療費控除の対象になる場合もあるという。