着床前検査 実施容認へ

2021/10/28

朝日新聞 2021年10月24日

 体外受精で得られた受精卵のすべての染色体を調べ、異常のないものを子宮に戻す「着床前検査」について、日本産科婦人科学会(日産婦)は23日、実施を認める方針を示した。臨床研究の中間報告から「流産を減らす効果が期待できる」と判断した。

 検査は欧米では広がっているが、有効性ははっきりしていない。受精卵を選別することは、病気や障害の排除につながりかねないとの倫理的な懸念もある。日産婦は、重い遺伝病がある場合や、夫婦いずれかに染色体の形の異常があって流産を繰り返す場合を除き禁止してきた。

 日産婦が23日のシンポジウムで示した案では、対象は①流産を2回以上経験し、体外受精が必要と考えられる場合②2回以上体外受精をして妊娠しなかった場合③夫婦いずれかに染色体の形の異常がある、の三つのケース。実施施設は、日産婦の生殖補助医療の登録施設(3年以上)であること、施設のホームページで生殖補助医療の成績などを開示していることなどを条件とする。日産婦は早ければ今年度中に見解を改定する。

 日産婦の臨床研究の中間報告では、参加した4348人のうち、受精卵を子宮に戻せた人の妊娠率は66.2%で。、流産率は9.9%だった。2019年の日産婦集計の体外受精妊娠率と流産率よりもよい結果だった。ただ、63.4%の人は子宮に戻せる受精卵を得られなかった。日産婦は「検査によって子どもを得られる可能性が高くなるかはわからない」としている。

 シンポジウムでは、倫理的懸念についても議論があった。ダウン症などは、受精卵の段階で排除されてしまう。日本ダウン症協会は、「この技術が(胎児の疾患の発見を目的に広く実施する)マススクリーニングとして利用されることがないような制度設定が必要」との意見を表明した。