着床前検査で流産率低下  日産婦 有効性検証の中間報告

2021/09/26

朝日新聞 2021年9月24日

 日本産科婦人科学会(日産婦)は23日、「着床前検査」の有効性を調べる臨床研究の中間報告を発表した。この検査は体外受精で得られた受精卵すべての染色体の数を調べ、異状のないものを子宮に戻す。報告では、通常の体外受精にくらべて流産率が下がったという。

 受精卵は染色体が1本多かったり少なかったりすると着床しにくくなったり、流産の可能性が高くなる。染色体の数に異常のない受精卵を選べば、理論上は妊娠・出産しやすくなると期待されるが、有効性ははっきりしていない。

 国内では日産婦が2020年から臨床研究を始めた。①流産を2回以上経験②体外受精に2回以上失敗③夫婦いずれかに染色体の構造異常がある、のいずれかに該当するカップルを対象に、全国109の医療機関で、年末までの予定で実施されている。23日のシンポジウムで、7月までに参加した4348人の解析結果を公表した。受精卵を子宮に戻せた人で妊娠に至ったのは66.2%、このうち流産したのは9.9%だった。日産婦の2019年の集計によると、通常の体外受精で受精卵を子宮に戻した人の妊娠率は33%、流産率は25%。ただし、4348人のうち63.4%の人は受精卵を子宮に戻すところまで進めなかった。日産婦は、検査を受けることで最終的に出産率が上がるかどうかはわからないとしており、今後も研究を続ける。

 この検査には期待の一方で課題もある。検査の過程で受精卵がダメージを受け、着床できなくなる恐れは否定できない。子どもへの長期的な影響もまだ十分にわかっていない。染色体すべてを調べるため、ダウン症などの人の排除につながりかねないとの声もある。日産婦は来月再びシンポジウムを開き、検査の進め方について議論する。